電子納品(その4)

 今回は実践編として、現場着工から竣工まで、電子納品の流れを概観したいと思います。

 

まず着工時。基準となる要領・基準・ガイドラインを確認します。
 国土交通省の国土技術政策総合研究所のページ(第18号・リンク集に掲載)にある該当書類に一通り目を通してください。ここで重要なのは、契約年月日によって適用となる基準が変わる場合があるということです。特にCAD製図基準は、毎年改訂されているので注意が必要。
 また、ファイル共有のルール、保存フォルダ名、ファイル名の命名規則等を現場内で統一して電子納品を意識した書類作りを行うと、後で非常に楽です。

 次に、事前協議となります。これも、ガイドラインを参考にチェックシートを作成します。
 作業は楽ですが、第20号でお話したように多くの壁が立ちはだかります。特にソフトやハードの選定には、専門知識が必要な場合が多いので、情報システム部やCALS/EC インストラクター等、専門家に依頼されることをおすすめします
 また、発注者によっては、場合によりソフト指定があります。よってソフトの購入予算等も検討しておく必要があります。しかし、実際にはそのための追加経費は認められない傾向が大ですから、できるだけ自社で使っているソフトやそのバージョンで作成可能なよう、事前協議をすすめることがポイントです。

 上記作業が済めば、日常の成果品の作成です。
 写真管理は、ためておくと大変なのは従来のフィルム写真と同様です。その場で写真内容が確認でき、専用ソフトで比較的容易に作業できますから、毎日整理しておく習慣をつけましょう。特に最初は、予め記入しなければならない項目等もあり、手間がかかるものです。
 注意したいのは、私印のある書類(打合せ簿や検査書類の表紙)の取り扱い。「スキャナーでとりこんで電子化してほしい」との要望が多いようですが、これもまとめてやるとなかなか大変です。こまめに行うようにしてください。

 中間検査では、検査書類や打合せ簿は紙ベース、写真や図面は電子ファイルベースという組み合わせで行うパターンが多いようです。日常の作成も、これらを意識した方法で行うと負担が少なくてすみます。
 つまり、紙ベースのものは電子ファイルで作っていても必ず打ち出しておく。電子ファイルベースのものは、
確認のために印刷しても、確認が終わり次第破棄する。これらを現場全体の習慣にします。そうすれば、検査時にあわてて準備する必要もありません。
 もちろん、これらの検査項目も事前協議でしっかり打ち合わせておきましょう。さもないと、あれもこれも印刷してくれという事態になりかねませんのでご注意ください。

 工事竣工時には、今まで作った資料をまとめ、CD-Rに保存し提出します。
着工時のルール通りにできていれば、この作業は簡単に終わります。が、そうでないと徹夜続きでクタクタ
になることは(私が?)立証済みです。着工時のルール作りを確実に行うことが大切です。
 なお、最新版のウィルスチェックが行える環境を整えておいてください。ウィルスチェックは必須です。

 書類は従来と変わりなく、それが電子化されただけですから、今までワープロや表計算、CAD等を用いて書類作成されていた方は、たいして違和感を抱かれなかったと思います。しかし、そうでない方にはため息ものかもしれませんね。
 最初の着工時準備と事前協議をきちんと行えば、そう難しいものではありません。そこに、普段よりも余分に
マンパワーをかける意識をもてば、きっとうまくいくと思いますよ。