電子データの利用ルール

 電子認証、電子調達と少し脱線しましたが、今回から、また電子データの利活用に戻ります。さて、作成・管理・保存のルールをお話しましたので、いよいよ利用についてのルールです。

 利用ルールといっても難しいことではありません。大事なのは、

 ・既存データを壊さないようにする。
 ・利用したことを記録に残す。

 
以上の2点です。この2点についてお話します。

1.既存データの保護

 初心者にありがちなのが、ついつい上書きをしてしまうことです。ISOに限らず、電子納品において履歴を残すことが重要視されています。最終納品物は、その過程がどのようだったかを一つでも記録する必要があるからです。
 そういう点も踏まえると、大幅な加筆修正を加える場合、必ずファイル名を変更する習慣をつけることが重要です。この際に、修正した最後に名前を変更するのではなく、修正する前に変更することが大切です。別名で保存することで、既存データの保護はもちろんのこと、万が一大きなミスをしても、既存データからの修復が容易だからです。
 これと同時に、フォルダやドライブ等、保存先も変更するほうがよいでしょう。例えば、共有領域に利用できるファイルがあるならば、一旦自分の領域に別名で保存して加筆修正します。余計な手間であるように感じますが、元ファイルを読み込んだ後、「名前をつけて保存」の作業で、自分の領域(マイドキュメント等)に保存先を変えるだけですから、慣れれば気にならないはずです。

2.利用記録作成

 データは多ければいいわけではありません。データが多くても、利用されなければ無駄です。そうならないためには、作成ルールや管理ルール、全文検索システム等の導入により、利用しやすい環境を整える必要があることは以前にもお話ました。しかし、それでも再利用されやすいデータ・ほとんど利用されないデータは出てきます。

 ところで、再利用率が高いかどうかは、どうやって判断するのでしょうか。それには記録をとる必要があります。「記録用紙にいちいち書くなんて大変だよ。きっと書かない人もいるだろうし。。。」という声が聞こえてきそうですね。もちろん、その通りです。
 ですから、記録用紙をできるだけ使わずに記録してもらいましょう。つまり、それが先ほどの「ファイル名を変更する」習慣なのです。ファイル名には一定の規則をもうけるべきだということは作成ルールの説明時に少し書きました。CALS/ECやISOでも、文書管理でファイル命名規則 を決めているはずですから、それを利用します。大半のルールは、作成する書類名(施工計画書、作業手順書)+日付のはずですから、そこに参照もとのファイ ル名がわかるような番号や記号を追加してもらうのです。例えば、現場番号198001の施工計画書を利用して新しい現場208002の施工計画書を作成するとするならば、「施工計画書(00709)?198001」というように命名します。ファイル名は多少長くなりますが、これで引用元がわかります。現場フォルダを208002というふうにして、そこに先ほどのファイルを保存します。あとは、定期的にフォルダ名とファイル名を抽出するプログラム(Excelのマクロでもできますし、フリーソフトもあります)を用意して引用元を集計すれば、人気データがわかるようになります。

 人気データは、同種の内容であるというだけではない、何か利用されやすい理由がある場合が多いものです。例えば、見やすい・内容的によくまとまっている・現場名を置換するだけで他現場にも使える汎用性がある、などです。そういうデータはできるだけ多くの人に使ってもらうようにしなくてはなりません。そうすれば、再利用の利便性を理解してもらえるだけでなく、作成書類の品質向上、類似性による再利用率向上などがあるからです。それが利用記録の一番の目的なのです。

 上記2点での利用ルールをまとめると

 ・別名保存で利用開始
 ・ファイルフォルダ命名規則に一工夫

ということになります。これ以外にも、共有フォルダ・個人フォルダの使い方やデータの部品化などありますが、上記2点をやってからでも遅くはありません。

 最後に、大切なのは、推奨ではなく義務として、全員が同じルールで行うことです。ルールを守らず作成されたデータが増えると、せっかくの再利用性が一気に低下します。確かに急ぎの書類やその場しのぎの書類にまで厳しいルールを適用するのは困難ですが、施工計画書のように必ず利用できるものは、多少手間がかかってもルールにのっとり作成しなければなりません。ここが利用ルールの一番難しいところでもあります。