財務会計と管理会計

 前々回前回で、SOX法による内部統制のお話をしました。その流れから、今回は会計に関する説明です。

 前々回にお話したように、内部統制とは、企業会計や財務報告の透明性正確性を高めるために、内部できちんと業務をチェックすることです。つまり、不明瞭な会計をなくすのがそもそもの目的でした。
 不明瞭会計をなくせば、それと同時に詳細な会計資料を手にすることができます。そこで、管理会計が登場するのです。

 財務会計と管理会計の違いは何でしょうか。
 

いろいろありますが、法律的な観点から見ると、財務会計は義務ですが管理会計はしなくても構いません。
「じゃ、どうしてやるんだよ。無駄な業務が増えるだけだろう」という声も聞こえてきそうですが、これは業務効率や経費削減に必要な管理なのです。業務結果 をお金に換算したものが管理会計の基礎です。すなわち、管理会計を行うことでムリ、ムダ、ムラを見つけ出します。これが業務を効率よくできるようにし、経費を削減するもとになります。
 財務会計は、意地悪な言い方をすれば、ただ使った結果を整理するだけですから、明確な視点を持たないと業務効率や経費削減に効果はありません。もちろん、会社全体指標としての目安を導き出すことはできますが、部門単位や現場単位での指標を導き出すことは困難です。

 ところで、財務会計の目的は、財政状態(貸借対照表)や経営成績(損益計算書)を、株主などの外部の利害関係者に報告するために、決められた基準に従って作成することです。当然、使われる資料は過去の実績であり、正確性が重視されます。企業会計原則、財務諸表規則といわれる規制に基づき作成し、公認会計士の監査証明を得る必要もあります。
 それに対し、管理会計の目的は、経営者を含めた企業内の管理者が、業務管理や将来予測のために使える情報を提供することです。そのため、法規制や基準がないのはもちろんのこと、正確性より有用性(使える資料)や迅速性(できるだけ早く情報が集まる)ことに重きが置かれるのです。「正確性がなくてもいいの?」と思われるかもしれませんね。もちろん、ないよりあったほうがいいのですが、将来予測など不確定なものも管理対象の中にありますので、過去だけを取り扱う財務会計と違って正確性を確保できないためです。
 各視点から比較しますと、

           管理会計              |   財務会計
情報利用者|企業内部の経営管理者 |企業外部の利害関係者
主な目的   |利益獲得、業績管理     |利益配分、利害調整
社会的性格 |私的会計               |法的、制度会計
価値基準   |経営管理に役立つか   |会計原則に一致するか
報告時期   |目的に合わせた日時   |決算期に合わせる
客観性     |必ずしも証拠は必要無い |情報には証拠が必要
情報の重点|有用性、迅速性         |正確性、適法性

上記のような違いです。
 ただし、過去データは、基本的には同じものを利用しています。つまり、内部統制の結果得られるデータをどのような目的・見方で加工するかが、管理会計と財務会計の違いです。

 管理会計は財務会計と違い、予測も考慮します。つまり、予実管理(予算と実績の比較)、原価管理(実行予算に対する支払額の差)のように目標としていた数値との差異分析も、管理に含みます。予測は過去の実績データから生み出されるものですが、その資料を作成するのも管理会計の一部なのです。

 管理会計は財務会計に比べて、迅速性が要求されます。月締め、週締め、日締めとより短期間で結果が出ることが大切だからです。
  よって、ITの力が必要不可欠となります。また、ITの力を利用すれば本来重視されていない正確性も確保でき、財務会計への転用も可能となります。前回お話した日本版SOX法による内部統制で、IT活用が明記されているのはこのようなところにも理由があるのです。