業務改善のはじめかた

 3回ほど前に「業務改善ができないのはなぜか」を取り上げました。ポイントをまとめると

・本当の問題意識が欠落している
・コスト意識を全社員でもっていない
・危機感が共有できていない
・業務改善のメリットがうけれない

の4つで、これらは単独ではなく複合して業務改善の大きな壁となっています。

 では、業務改善をするにはどうすればいいのでしょうか。今回は業務改善のはじめかたをお話します。

 

まずは意識改善からはじめましょう。それも、「現状のままではいけない」だけではなく、「この業務のこの手順を変えれば業務がよくなるんじゃないか」と、具体的な内容に踏み込むことが必要です。

 そうはいっても、漠然としている方がほとんどです。なぜなら、入社以来これが
業務手順だと教えられてきたでしょうから、それ以外は思いつきません。そこでお勧めするのが他社事例です。「そんなの大企業の成功事例でしょ。うちには関係ない」「環境が違いすぎるよ」などと、最初から及び腰になっていては業務改善どころではありません。

 別に、成功事例を見習えというのではありません。できれば同規模の同業
他社を参考にするのが理想ですが、同規模の関連業種他社でもよいですから、見るのが望ましいです。大事なことは、自社以外のやり方を見ることです。そこから自社との違いを見つけ、自社のほうがいいところ、他社のほうがいいところ(つまり、自社の悪いところ)を見つけましょう。もちろん、自社の進歩的な点が予想以上に見つかれば、自信にもなります。業者同士の組合や商工会等で、このような催しができればいいのですが、あたってくだけろの姿勢で、その業界の業務改善で有名な会社に依頼することも有効だと思います。
 本やインターネットで事例を調べてもいいのですが、やはり百聞は一見にしかずのようで、他社見学が一番インパクトが大きいようです。テレビでも、最近はずいぶん経済番組が増えてきました。それらを見るのもかなり刺激になるでしょう。

 中堅以上であれば、自分の現場以外の場所を訪問するだけでも効果があるかもしれません。少し大きい会社となると、同じ会社内であっても亜流の業務手順が 発生していますし、部分的な改善が(展開されることなく)行われている場合も多くあります。(本人たちはそれが標準だと思っているでしょう。)
 安全巡回や品質パトロールと称して、若手や中堅の交流促進は、いろいろな面で会社の力を向上させます。ただし、ただの見学会にならないよう見るべきポイントをしっかり押さえるようにさせます。

 自社とは規模が違う同業他社からも、学べるポイントはあるはずです。協力業者と元請の関係があるところならば、元請に思い切って相談するのもよいでしょう。「同業他社はどこもないんだけど」という会社は他業種に行きましょう。確かに主力の業務は異なるかもしれませんが、事務経理をはじめとする間接業務に大きな差はないはずです。必ず学べるところがあるはずです。

 自社以外を見ることによって、自社の良い点悪い点を洗い出す素地をつくる、それが業務改善の第一歩です。他社を見る際には、成功事例だけを鵜呑みにして自社の実態を無視した改善に走らぬよう、必ず自社の良いところも見つける意識をもちましょう。自社と他社の差を埋めるのではなく、自社をよりよい方向にもっていくことが大切なのですから。

 見学会や経済番組の上映会などは、経営側から見ればもしかすると無駄な時間つぶしに見えるかもしれません。しかし、公式を覚えただけでは使えないで、練習問題をこなすことで身にくというのは、誰もが身に覚えのあることでしょう。自社の立ち位置をいろいろな角度から把握するために、「他人のふり見て我がふり直せ」が必要なのです。経営側の立場にある方は、ぜひこのような視点で、自社業務を見直す機会・時間を設けていただくようお願いします。自分の姿は鏡で見ることが出来ますが、業務の姿は見られません。他社を見ることで自社が見えてくるのです。これが、業務改善の問題意識をつくる最初の一歩だと私は考えています。