業務改善の育て方

 これまで3回にわたり、業務改善の始め方のお話をしました。
 
 ・他社事例を学ぶ。
 ・ブレーンストーミングを行う。
 ・IT化は最後に行う。

 まだ他にも留意点はありますが、とりあえず始められる段階になったとして次のステップに入ります。今回から、業務改善の育て方をお話していきます。

 

まず最初に、業務改善のプロジェクトを立ち上げます。少人数の会社では、全社員でいきなり始めることになるかもしれませんが、通常は一部の社員で始めます。当然、通常業務とは異なる作業を行いますので、プロジェクトとしてチームを作り、関係部署と調整できる枠作りをする必要があります。

 「定時以降で有志で集まればいいんじゃないの」という方もいらっしゃるでしょうが、効果が限定的になる可能性が高くなります。また、有志と呼ばれる方は頑張り屋さんが多いので、成功の確率は高まりますが、一般社員がついていけな結果になることも少なくありません。

 プロジェクトを成功に導くには、以下の3点をできるだけ押さえることが重要です。

1.小さなテーマ
 新規事業の立ち上げから運営までとか、経営戦略の策定などをいきなり始めるのは無理がありますし、関係者が多すぎて成功率が低下します。最初は小さなテーマからはじめ、徐々に大きなテーマに取り組むことが大切です。テーマとしては、一部署でとどまるようなものではなく、小さいながらも複数の部署が関係するものにすべきです。
  例えば、出張旅費精算の効率化というのは、総務・経理だけでなく対象側の営業も絡んできます。これをきっかけに、複数部署をまたぐ社内書類の業務フロー改善へと流れていくのです。そのためには、大きなテーマの中にいくつかの小さなテーマがあるといった流れを、プロジェクト開始前に決めておく必要があります。この部分が、プロジェクトの継続的な発展を確保する上で重要なことはいうまでもありません。

2.複数部署
 前述した小さなテーマは、複数部署に関係しますから当然、プロジェクトのメンバーも複数部署から選出される必要があります。一部署でメンバーを固め関係者にヒヤリングをするという手法もありますが、ヒヤリングの手間と実態を把握するまでにかかる時間(他部署にはなかなか本音を言えない)が大きくなり、成功率が下がります。他部署にも本音がいえるよう、プロジェクトには可能な限り全関係部署からメンバーを選出するようにします。、また、業務改善が目的ですからそれなりに業務に精通している、できれば主任クラス以上のメンバーで構成することが成功の秘訣です。

3.社長宣言
 複数部署でプロジェクトを作ろうとすると、有能な部下を出したがらない幹部がいます。業務の部分最適を優先するとそのような考え方になりがちですが、全社的な取り組みであることをアピールすると、その考え方ではだめであることを理解してくれるでしょう(頑固な人はのぞきますが)。
  そのためには、必ず社長ができれば全社員、最低でも幹部クラス以上を集めて、プロジェクトが全社的な取り組みであることを宣言することが大切です。特に、メンバーが全関係部署から参画できず、ヒヤリングを行う部署が出てくる場合には、これによって非協力的な態度を押さえることができます。
 また、プロジェクトリーダーになる社員に一定の権限を与え、プロジェクト進行がスムーズに進むようにすることも、社長宣言に加える必要があります。

 プロジェクトの最初に、上記の3点をきっちり押さえるのは意外とできないものです。というのは、どれも経営陣が動かなければならないことばかりだからです。プロジェクトは小さく初めて大きく育てることが成功の秘訣ですが、最初の段階で、いかに経営陣がしっかり関わって準備を進めるかが大切なのです。