業務改善のみせ方

   前回前々回では、業務改善のはかり方として、視点の持ち方とはかるタイミング、方法についてお話しました。今回、はかった指標のみせ方についてお話します。

 「みせ」方とひらがな表記にしたのは、「見せ方」であるだけでなく「診せ方」であり、「魅せ方」だからです。第一に情報を皆で共有するための「見せ方」、改善状況の診断をしてもらうための「診せ方」、さらに、業務改善の関係者だけでなく直接には関与しない社員にも改善の魅力を伝えるための「魅せ方」と3種類の意味をもつ持つと捉えます。
  せっかくはかった指標を活かす「みせ」方を、きちんと準備することが大切です。

 

では、具体的なみせ方、まずはタイミングについてです。前回、はかるタイミングはできるだけ早いほうがよいとお話しましたが、みせるのも、できるだけ早いほうがよいのです
 例えば、自動車販売店で、契約状況や営業員別の売上台数を告知するとします。ホワイトボードや模造紙を用い、グラフ化した表がよく掲示されていますが、これは「はかる」と「みせる」が同時に出来ているわかりやすい例です。
 このように、「はかりながらみせる」ことが理想です。もちろん、集計してからみせる、あまり表に出したくないが全員にみせたいという物もあるでしょう。このような指標は、表計算ソフトやデータベース、メール配信、電子掲示板など各種ITを使うことで容易に集計でき、機密性、同時配信も可能になります。
 大切なのは、自分たちが行った改善が、迅速に可視化される仕組みを導入することです。自動車販売店の例のように、紙ベースのアナログでも、選択する価値は十分にあります。
 なんでも電子化、IT化ではありません。これを忘れないでください。

 次に、指標の可否です。指標が、いい具合になっているのか悪い具合になっているのか、改善状況が一目でわかるよう、指標と基準(目標)を必ず対比させて表現しましょう。はかった指標のみ表示するのでは、いけません。
 例えば、「週当たりのヒヤリハットを3件以内にする」のが目標ならば、3件の所に線を引いた折れ線グラフを用意し、週ごとの件数を掲載する。そうすれば、目標に近づいているかどうか、あるいは設定目標が適切であったか等が明確になります。これが「診せる」ということです。「診せる」ことで、改善へのさらなる工夫を出したり、悪い傾向に早期に手を打てるでしょう。
 「診せる」により、他方からのアドバイスを受けやすくもなり、また業務改善関係者の努力が明確になります。

 そして、指標をみんなが見たいと思わせる「みせ方」です。先ほどのヒヤリハットを例にとると、模造紙に上記のグラフを書き、皆が集まる休憩所や打合せ室に張り出します。カラフルな付箋などで、「あともう少し」、「達成!この調子」などのセリフをつけてみましょう。指標が、ただの数値でなく、努力の成果として「魅せる」ものになりえます。もちろん、色使いや字の大きさ、付箋の形(ふきだしのように切り取る等)の演出を行うとなお良いでしょう。キャッチフレーズやワンポイントアドバイスなど、わかりやすく覚えやすい効果的な言葉を使うことも心がけてください。

 最後に、業務改善の成果を、関係者以外の社員にみせる方法です。理想は「改善発表会」といった形で、経緯や改善状況をまとめ、短時間で全体が把握できるようにすることですが、マンパワーや時間がかかりすぎるのが難点ですね。
 そこでおすすめするのが、社内ブログです。あらかじめ、改善の目的や目標、指標についての簡易な説明などをテンプレート(雛形)にしておきます。そこに数字を埋めていけば、定期的に改善状況を報告できます。その時、単なる指標報告にならないよう、担当者の思いや閑話休題をのせることも必要でしょう。
  「うちは、ブログなんて無理」という場合は、壁新聞のようなものを社員がよく見る掲示板に貼るか、社内報にはさんで配ってもよいのです
 定期的に発行するのは少々大変ですが、凝った構成は必要なく、関係者の写真や簡単なコメントを掲載し、ライブ感を出すようにします。改善内容によっては、今月のMVP(最優秀者)を掲載するなど、改善対象者のインセンティブになるものも一つの魅せ方です。

 業務改善は楽ではありませんが、みせ方を工夫することで「楽しめる」部分を作り出すことが、関係者およびその他社員にも有効だと思います。

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