原価管理

 建設業界は厳しい環境下におかれています。公共事業予算は削減され、民間の設備投資も一部を除き基本的には低調です。売上を確保するのはなかなか難しいです。

 その中で生き残っていくために必要なことは経費を管理していくことで利益をねん出できる体質改善です。つまり、原価管理をしっかりやっていくことが最重要課題となっています。

 最近は様々な市販ソフトや無料ソフトが出ており、ITを活用すれば比較的容易に数字を管理できるようになりました。しかし、「見える化」の際にもいいましたが、数字だけを管理しても意味がありません。その数字だからどうするのか、どうしたからその数字になったのかという仮説検証ができなければいけないのです。

 今回から何回かにわたって、原価管理で心がけてほしいポイントをいくつかお話しします。

 まずは、個別原価管理すなわち工事ごとに原価を考えるということです。「当たり前でしょ」といっていただければありがたいのですが、中小建設会社によっては、個別に管理するのではなく、全体で材料費、労務費(人工)、外注費、経費を考えているところがあります。

 理由は「2つの現場を掛け持ちをしている作業員が多い」とか、「外注さんはその日の状況で違う現場にいってもらっている」とか「機械は月単位で管理しているので複数現場にいってもいっしょ」等一つの現場で管理しづらいからというものです。

 しかし、世の中の建設会社の大半は特定の分野に強く、全般的にできる会社は少ないです。つまり、自社の強みのある(もうけを出しやすい)工種を見つけることが利益向上には必須です。そのためには、工事ごと個別原価管理を行い、どの分野のどのような規模の工事が自社に向いているのかを見極めなくてはいけないのです。

 これは、建設業に限ったことではありません。複数店舗を持つ小売業や複数の分野に商品を提供している卸売業、様々な品種を作っている製造業。どの場合でも得意分野をみつけ、そこに磨きをかける「選択と集中」がないと、いまの厳しい時代を乗り切ることは難しいです。

 では、個別原価管理を行うために大切なことはなんでしょう。それは間違いなく、個別の施工計画をきちんと立てることに他ならないと思います。施工計画はそこにヒト・モノ・キカイが配置されることでカネに直結します。発注者に出すための安全や品質等が書かれた形式ばった施工計画ではなく、いかに効率よくヒト・モノ・キカイを使うかを考え抜いた施工計画です。

 私が知っている限り、いろいろな想定(天候に代表される予期しにくいものを含む)をしながら、それでも工期通りに品質・安全を確保できる施工計画を立てられた場合は確実にもうけを出しています。以前お話ししたのように「段取り八分」ができている現場はよほどのトラブルがないかぎり、うまくいくのです。

 「そうはいっても、受注時に厳しい金額でしか取れない現場はもうけなんかでないぞ」といわれるかもしれません。でも、赤字を最小限にすることができれば、他工事でカバーしやすくなります。それは、ある意味プラスになるということと同じなのです。

 しかし、この施工計画をきちんと立てるというのはとても大変です。施工経験はもとより、施工条件や周辺環境、予定している協力業者の能力等、天候と同じくらいぶれやすい要素がいっぱいあります。これらについてある程度の余裕を見ながらでも、無駄な余裕を最小限にすることを意識していかなくてはいけません。難しいからといってあきらめている方も少なくありませんが、数をこなせばこなすほど精度は確実に向上します。そして、ひとりより二人。二人より三人と複数の人で検討することでさらに精度があがってくるのです。会社の中に施工計画をきちんと立てる風潮をつくり、担当者まかせにせずにできるだけ多くの人が関与できる仕組みを入れることが成功への最初のステップになるのです。

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