原価管理(その3)

 前回は、実行予算の重要性と適切な実行予算を作成するために必要な歩掛の話をしました。今回は実行予算ができたあとの次のステップ、調達について管理ポイントをお話しします。

2.調達

 実行予算ができたら、その予算に見合うかもしくはさらに値下げの期待できる調達を行うことになります。調達には大きく、材料手配と労務手配、それを双方合わせた外注手配という3つに分かれます。

(1)材料手配

 基本的には商社や販売店からの購入となります。そのため必要不可欠な作業は相見積と呼ばれる複数企業からの見積書提出依頼と比較になります。なぜか建設業では「合いみつ」と違う漢字を使っていますが意味は同じです。手間のかかる仕事ですが、原価管理には一番大きな影響力をもちます。ついついなじみの業者に依頼することが多いですが、どの企業も必ず得手不得手があります。しっかり把握して、必要に応じて新しい企業への見積依頼をとることが大切です。また、年間を通して使うものであれば、現場単位での個別契約でなく企業全体での一括契約が有効になります。工事は順次契約しますので正確な数量での契約はできませんが、年間目標からおおよその数量を計算し、総量で契約することで現場単独より単価を下げることが可能になります。

 ただし、生コンクリートなど現場からの距離で必然的に購入会社が決まる場合は、値段が固定しがちです。しかし、使用時期や数量を明確にすることで相手の準備負担を減らすことで価格交渉をすることもできるのを忘れないでください。

(2)労務手配、外注手配

 業務内容に応じて、適切な人手を要求するものです。最近は材料支給型の外注手配もあるので、労務手配はガードマン等一部のものをのぞき少ないような気がします。

 いずれにせよ、人が動くもので一番大切なのはできるだけ「細く長く」使えるような契約にすることです。10人を3日より1人を30日依頼するほうが協力企業には好まれます。10人を1か月間養うのに3日の現場を10回変わるより、10の現場で1人ずつが30日働くほうが管理がしやすいからです。もちろん、最初の1週間が労災事故が起きやすいことを考えると安全面からも後者のほうが望ましいです。

 当然価格交渉でも有利な条件を引き出せますが、このためには様々な配慮をした細やかな工程表が必須となります。通常建設工事の場合、発注者が目安となる積算用の工程表をもっています。しかし発注者の積算(工事費の算定)根拠の工程通りに手配をかけていたら、今はほとんど儲けがありません。なぜなら積算は比較的大規模な作業での効率的な作業を前提にしているので、中小規模の工事ではその効率が出せないからです。しかし、同時に各々の工種の組合せでの評価はしていません。ここをうまく活用することで中小規模でも効率の高い業務を実現することができるのです。そのため並行する工事や工事内での施工順序などを何回も検討しながら「細く長く」できる方法を考えるのです。考えずにすべてを臨時契約にしていたら、もうけなどでるはずがありません。

(3)契約ルール

 材料にしろ外注にしろ、大切なことは契約ルールです。社内で統一した契約の際の細やかなルールをまとめておき、契約する企業に事前に渡すことでトラブルを最小限にするとともに余計な予算を相手が見積もらなくて済む分、コスト削減ができます。たとえば、材料搬入の際のユニック車(クレーン付きトラック)の有無や荷卸し箇所でのトラックサイズ(10tが入れるのか4tしかはいれないのか)など具体的な内容は現場で書くにしても、どのような項目を契約の際に確認すべきかをまとめたものがあるのはコスト削減に大きな役割を果たします。できれば、共有フォルダに材料種別や工種別に入れておいておくと穴埋めするだけで打合せできるので便利ですよね。最初はよく使う材料や工種からはじめて少しずつ増やしていくといいと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする