電子納品と写真管理(竣工時)(その3)

 前回に引き続き、竣工時のポイントについてお話しします。今回は非公式な納品物と竣工検査時のポイントに関してです。

(1) 紙納品

 電子納品が導入されて10年以上たちますが残念ながら、いまだ紙納品との二重納品はなくなっていません。また、紙納品対象物の無理な電子化(スキャナー取込)もなくなっていません。完全に非公式な納品物です。

 事前協議での打合せ事項がここだけは覆されることが少なくありません。そこで大切なのは可能性があることを前提にファイリングをしておくことです。二重納品がなければ、そのまま廃棄してもいいだろうものをきちんとファイリングしておけば、もしものときに助かります。

 今後、工事中情報共有が進んでも、根本的に絞り込んだ納品を義務付けない限り、抜本的な解決は難しいと思っています。自衛策として、電子化したものを紙でファイリングしておくよう心がけましょう。

(2) 工事写真ダイジェスト版

 ダイジェスト版とは工事写真の中から主要な工事の流れや主な構築物がわかるように十数枚~30枚程度の写真をアルバムにしたものです。デジタル写真からアルバム化したい写真を選んで専用ソフトで印刷することが多いです。

 これも竣工時に求められる非公式な納品物です。フィルム写真の時代には重くて大きな写真台帳を見せるのが大変だったので作るのが当たり前だったのですが、デジタル写真の時代で、パソコンで簡単に見れるようになってもこの納品物はなくなっていません。

 ただし、竣工後社内で工事説明をする際にも使えるし、自分で一部持っておけば施工資料や後輩への教育資料にもなるので、作っておくことはあまり悪いことではないと思います。

 できれば、着工時にダイジェスト版を作ることを意識して写真撮影を設定しておくといいのですが、写真管理基準を元に写真撮影を行って写真管理ソフトに登録しておけば、竣工間際でもそんなに難しくなくダイジェスト版を作成することができます。デジタル写真になってから撮影枚数が格段に増えたため、選ぶ手間はあっても取り損ねていることが少なくなったからです。

 とはいえ、意識的に撮った写真と管理基準で撮った写真では見やすさはだいぶ違うので、着工時に計画することをおすすめします。

(3) 竣工検査時の準備

 ノートパソコンにプロジェクターをつないで投影できるようにすると大勢の方で見れるので楽ですが、少人数ならば、液晶テレビや大型ディスプレイでも代用できます。できるだけ早い段階で検査に来る人数を把握するようにしましょう。

 検査書類は電子書類も紙書類も検索しやすいよう番号表示や目次作成はしておくことが望ましいですが、意識的に書類を絞り込んで写真のダイジェスト版のように検査のダイジェスト版をつくることをおすすめします。

 特に電子書類であれば、納品用のファイル名でなく、日本語表記のフォルダ名、ファイル名で閲覧しやすくしたものを用意しておくと検査をスムーズに受けることができます。通常は検査官の指定ファイルを表示するのですが、工種指定だけして、場所指定までしないことも多いので、準備をしておくことをおすすめします。

 また、検査官用の工事概要書をつくるのもいいです。資料としては新規受入教育用の工事概要と全体工程表、全体平面図と代表構造物の一般図です。見やすいようにA3に統一してレイアウトしておくと書き込みもしやすいので好評です。

 その際に強調したい改善事例や施工特徴を入れておくと書類検査時にも反映されることがあります。上記のダイジェスト版と合わせておくと流れができやすいです。

 竣工検査は次回工事に大事な営業の場だと思います。可能な限りスムーズな検査を行える工夫をしましょう。

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