電子納品と写真管理 2012

 今回は電子納品の現状として、CALS/ECの講習会で入手したお話をいくつか紹介します。

(1) 全体の傾向

 建設CALS整備基本構想では、2001年度から10年かけて市町村含む全公共団体で何らかの形で電子入札・電子納品が行われている予定でした。

 現状は、都道府県、政令指定都市レベルでは100%に近い状態で実施されているものの中核市(人口30万以上)では電子入札が7割から8割程度、電子納品は3割程度といった状態です。さらに次の段階である情報共有システムに関しては、都道府県ですら50%程度といった状態です。

 また、本来電子納品のデータは維持管理に利用されるために電子納品保管管理システムに登録され、検索できるような環境を整備すべきなのですが、こちらも都道府県で6割に届いていない状態です。

 つまり、まだまだ基本構想が実現したい状況にはなっていません。

(2) 電子入札

 電子入札はコアシステムと呼ばれる国交省の入札システムに準拠したシステムを多くの自治体が利用しています。しかし、発注者ごとに動作保障しているブラウザのバージョンが異なったり、必須となる基本ソフトウェアのバージョンが違うなど一つのパソコンに導入できないケースが出ています。結果として多端末化と呼ばれる入札のためのパソコンを複数用意する状況は変わっていません。

 入札図書の電子データによる提供は進んでいるものの紙での提供はまだ残っており、契約段階に関しては電子契約までいっていない状況です。

(3) 電子納品

 電子納品の仕様書になる国交省の要領や基準は平成22年9月に一般土木と電気がやっと(案)から正式となり、平成23年度工事から適用されるようになりました。しかし、機械はまだであり、追随する都道府県も(案)がとれていません。

 平成22年9月の改定より二重納品(紙と電子納品両方)の排除やオンライン電子納品(CD-R等の電子媒体を使わないネット経由)への対応などがうたわれていますが、アンケートによると現状は二重納品が6割近くに上っているようです。

 特に事前協議の際には電子納品のみといわれていたにもかかわらず、竣工時に紙も併用といわれている例がまだ少なくなく(全体の2割)早急な改善が必要だと思います。

 検査時も紙ベースでの検査が主流であり、電子データのままの検査はまだまだといった状況のようです。

 図面形式も本来はSXF形式で受領し、SXF形式で納品すべきなのですが、AutoCADの標準ファイル形式であるDWG形式で受領し、DWG形式のままで納品しているケースがかなりの割合をしめているようです。結果として画層や線種・線色なども基準通りになっていない可能性が高いため、維持管理には使いづらい状況になっていると思います。

(4) 情報共有

 施工中の情報のやり取りをシステムを利用して行う取組は少しずつ進んではいるもののまだ少数派であり、押印した紙が正式書類として扱われているのが現状です。

 また、情報共有システムも多くのメーカーがあり、操作も異なるため、受注者側の負担も少なくありません。

 電子入札、電子納品はまだ課題が多く残されており、これからもしばらくは試行錯誤を繰り返していく必要がありそうです。できるだけ全国で統一された仕組みで簡易に負担少なくできる仕組みを構築していってほしいです。そのためにも工事規模に応じた電子納品物に差をつけたり、全体平面図や位置図など他の工事と関連する図面のみきちんとした画層管理を行うなど納品物の重要度に応じた作成レベルを設定する必要があると思います。既に島根県など一部の自治体で取り組まれているようなので、全国的に展開することを望みます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする