作業手順書の進め方(その2)

 前回に引き続き作業手順書の作成の進め方についてお話しします。

前回は作業手順書作成を優先する作業として、

(1) 危険度の高い作業:S(安全)への影響度が高い作業
(2) 作業効率の悪い作業:D(工期)への影響度が高い作業

を紹介しました。この2つの対象となる作業の手順書が作成され、それをきちんと守れるようになれれば、かなり現場の雰囲気や変わってくると思います。でも、もう少し対象作業を増やしたいところです。

(3) 品質の問題が多い作業

 次はやはりQ(品質)への影響度が高い作業です。「品質第一じゃないのか」と言われそうですが、手順書作成という観点からすると安全確保、工程厳守の次になるのではないでしょうか。

 品質の問題が多い作業とはなんでしょうか。一番は作業に経験や技術が必要な作業です。例えば、鉄筋組立は図面上で描かれているのは完成形です。しかし、実際にはそれぞれの鉄筋をどの順番で組み立てるかをきちんと決めないと構造上力の伝達がおかしくなるような配筋をしてしまう可能性があります。また、「あき」や「かぶり」など仕様書を少し読めばわかる品質上の基準も把握せずに「大きいことはいいことだ」と作ってしまうと劣化の原因になったりすることもあります。このような作業を選びましょう。

 品質に影響を及ぼす手順書は仕様書や基準、構造等技術の基本知識との連動は不可欠です。一般的な作業より技術知識に手厚く説明をつけるように心がけましょう。また、ベテランの経験値が生かされる型枠加工などもできるだけ形式知にしてください。

 二番目は相番作業など複数の業者が関与する作業です。責任の所在がはっきりしないことで品質の問題がおきることが多くあります。このような作業は業者間では調整ができないので、必ず上位の業者、監督と作業調整を行うようにするとともに、作業手順書に他業者との関係を明記することが大切です。

(4) 作業員の多い作業

 最後はC(費用)への影響度が高い作業です。とはいってもこの作業の前に選定しているS(安全)D(工期)Q(品質)も作業がきちんとできなれけば、費用への影響度はとても高いです。また、今までに費用の高いものも多く含まれていると思います。

 そこで、ここでの作業は作業員が多く関与するものを選んでください。作業員が多い作業は決して規模の大きいものとは限りません。むしろ、狭隘なところや端部など機械が入れないところや細やかなのに手作業しか作業できないところを人海戦術でカバーするような作業が選定ポイントになります。

 このような作業は一つずつの作業は単純作業なのですが、段取りよく組み合わせてやらないと待ち時間が増えたり、作業が一部に固まったりして、ムダ・ムリ・ムラが発生しやすくなります。

 作業手順書としては、単純に作業の羅列をするのではなく人の配置や単一作業を少し時間的空間的にずらして行うなどの記載をすることが大切になります。図面による配置やタイムスケジュールを明示するようにしてください。

 また、作業が単調で長くなる場合、休憩による意欲回復や作業交代など役割変更なども記載しておくと作業効率しいては費用への貢献ができると思います。

 ここまでの順位で選定していくとかなりの範囲の作業が網羅できるようになります。一度自社の作業の棚卸をして、優先順位を決めてみてください。

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