作業手順書の進め方(その6)

 前回に引き続き作業手順書の作成の進め方についてお話しします。

 今回は、最後に複数の作業手順書の体系化と組合せについてお話しします。前回までの流れで作成する手順の優先順位や記載すべき項目、実際の作成手順をお話ししました。これまでの流れで一通りの作業手順書(正確には作業標準)を策定することができたと思います。

 実際の作業は複数の作業手順の組合せで行われます。以前もお話ししたように多くの土木工事経験者は「現場は一品一品違うもので作業手順も異なる」と言われ、作業標準は使えないものだと思われているようですが、ある程度分解した単位作業の作業標準は組み合わせると多くの現場の基本となる作業を網羅することが可能です。

 要は作り方と使い方をしっかり押さえなくてはいけないということです。

 作業標準として手順書を作り、現場に合わせて一部を修正するのはもちろんですが、まずはある程度の作業標準ができたならば、それを体系立て、正しい組合せで使えるようにすることが重要です。

 例えば、擁壁(山の斜面などを支える壁状構造物)工事であれば、

 ・掘削工事
 ・鉄筋工事
 ・型枠工事
 ・コンクリート工事
 ・埋戻し工事

といった手順で進めますが、標準的な作業手順書を単純に並べるだけではとてもわかりにくいものになります。また、壁の傾斜角度や背面の作業空間によっては特殊な型枠や埋戻し方法が必要になります。

 結果として、擁壁工事といった一連の流れをまとめたものを作りそれを利用することが多いです。「だから単位作業のものを作っても意味がない」と言われる方もいます。

 しかし、鉄筋のかぶりやスペーサーの位置、コンクリート打設時のバイブレーターのかけ方などは基本とほとんど変わることがありません。つまり、基本をきちんと押さえた作業標準があったうえで、組合わせた手順書を作り、そこに擁壁工事独自の特徴を組み込めば問題はないのです。これが、調整池工事だろうが橋梁下部工事だろうが基本の部分は変わらないのです。

 この基本の部分の重要性を認識したうえで、組合せによる作業手順書を作れば、修正はとても限られた特殊な部分の修正と対象構造物の部位に対するの順番調整だけです。(場所によって型枠を先に作る場合もある等)

 これらを容易にするためには、もちろん、組合せ済みの作業標準があるのが理想ですが、できれば、どの作業標準を組み合わせれば一連の作業に必要な基本情報が入手できるかをわかる体系図をつくればいいと思っています。

 なぜわざわざ組合せ済みではなくて単位作業の組合せを用意するかというと組合せ済みだと応用が利きにくいうえに単位作業の大事なところが欠落してしまう恐れがあるからです。実際単位作業を組み合わせるとかなりのボリュームになるため、要点をまとめた手順書を作りがちです。結果として大事なところが認知されないまま、作業に入ってしまうことが少なくないのです。

 掘削作業が手作業から機械作業になる場合でも組み合わせならば、人力掘削を機械掘削の手順に変えてから全体を考えればいいのですが、組合せ済みだとなかなかそれができていないようです。もちろんベテランの人は問題ありません。私が意識しているのは新人や初めてその工種に取り組む人です。できるだけ容易に作業手順を作れるというより大事なことを忘れていない手順書を作れるようにする仕組みが最終的に安全で品質の高い工事のできる手順書を作れるのではないでしょうか。

 体系化も簡単なことではないですし、組合せてからその工種特有の情報を付加していくのもきちんとした社員教育なしでは実現できません。しかし、それらを全担当者が取り組むことで作業の意味やポイントを把握できていき、作業手順書の重要性を認識するのではないかと思います。

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