現場管理のレベルアップ(その4)

 前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。

 前回はC(Cost:原価管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はD(Delivery:納期管理)の話をします。

 納期管理は言い換えると工程管理です。オープン予定日や工場稼動日、トンネル開通式など決められた納期に向けて、工事を円滑にかつ効率よくすすめるための段取りと結果確認が納期(工程)管理です。

 ときどき、工事概要もおぼろげな状態で先に新聞や広報に(○○周年に間に合わせる的な理由で)無理な納期を書かれるという困った事態が起きているのは業界の方ならご存知だと思いますが、それでもそれに間に合わせようと努力してしまうのが業界人の悲しい性です。(請け負けだからという人もいますが・・・)

 愚痴はさておき、納期(工程)管理が工事現場の管理で大きなウェイトをしめるのはそれだけが理由ではありません。天気(梅雨時期やコンクリート打設に不向きな冬期)を読み、自然(土木工事なら地盤の固さ、建築工事な高層ビルに舞う風)を読み、人・機械の動き(上下作業、並行作業を安全に行える範囲)を読み、できるだけ無理を少なく、利益を最大限にすることが工程管理に必要だからです。時間と手間がかかり、成果もでるのがこの管理です。

 特に実施工程は第2の実行予算と呼ばれ、実行予算では表しにくい現場の動きを形にする役割をもちます。見直し手直しを最小限に事前にしっかり作るのが理想ですが、台風やトラブルなどの不測の事態に少しでも早く修正を施し、遅延を少なくする柔軟な対応も不可欠です。

 ちょっと変な言い回しですが「風(修正は素早く)林(状況は冷静に)火(実行はすばやく)山(決めたら動じずすすめる)」のような対応が求められるのが納期(工程)管理だと思います。

レベル0:管理なし
 建設業界でこのレベルの企業はあまりないと思います。納期が決まっていない工事はほとんどないからです。しかし、小規模工事や工事の一工種となると雲行きが怪しくなります。「いつ終わるかはお天道様に聞いてくれ」的な会話が出てくるのがこのレベルです。

 このレベルをあげるのは納期を決めることです。方法的には1日にできる作業量を推定し、積上げ方式で書かる日程を算出し、開始日から終了日を算定します。納期が決まっている場合は終了日から逆算して開始日を計算します。いつまでに始めれば間に合うということを把握できるようにすることが最初のステップです。

レベル1:場当たり的な管理
 このレベルの企業はそれなりにあります。専門業者の工事全体ではなく一部の工程を担うとき、前工程も流動的で後ろもよく見えないといったことがあります。上記で書いた算出でかかる日数は把握しているものの開始日が自社で決められないのを理由に特に日数を変えずに毎日を一生懸命がんばってこなすといった感じで工程をすすめます。また、工程を書き出す人もいれば、頭の中で描いている人もいるといったレベルです。

 このレベルからあがるには手順やルールを決めて、工程を見える化することが大事です。もちろん、突貫現場や急な変更で内容が見えにくい工事もありますが、着工してからでもできるだけ形にすることが大切です。

レベル2:手順がとりあえずある管理
 規模の大きくない建設会社だとこのレベルが多いかもしれません。公共工事の場合は、工程表提出が義務化されているため、一定の書式で作成していることが多いです。また、民間工事でも前述したように納期が決まっているために間に合わせるための工程を引く手順があります。ただし、書くだけで実際の結果を残すまでにはいきません。ひどいと依頼納期に合わせた現実的でない工程も見受けられます。また、担当者によってかかる日数が微妙に異なるのもこのレベルの特徴です。

 レベルアップのポイントは自社の歩掛(一定の工事に必要な作業量)を把握し、単一工種ごとでの標準工程を設定することです。もちろん歩掛を取れるためには実際工程の記録を残すことが必要になります。また、書きっぱなしにならないよう見直しタイミングや急な変更にも対応できる標準化された手順を決めることです。表現が堅いですが、属人性の排除がポイントです。

レベル3:標準化された管理
 工程は一定の書式、手順で書かれ、記録は残り、基本的な歩掛になっていくというレベルです。ただし、短納期のための創意工夫やそれを共有して自社の強みにするといったことまでは行っていない状態です。

 当然、次のステップにいくには改善を全社的に取り組む仕組みづくりが必要です。ISO取得企業であれば仕組みができていると思いますが機能しているかどうかはちょっと?です。最良の工程を立てるためには様々な情報と経験が必要です。それらを形にするのはとても難しいです。しかし、それを少しずつ(自社の一番の強みになる部分)でもいいので形式化していくとともに改善結果を共有できるようにしていくことが重要です。

レベル4:継続的な改善のある管理
 ここまでくれば、終わりはありませんが、管理としては完成です。なかなか到達できるレベルではありませんが、一部の工程、一部の分野といった範囲でもこのレベルになることが自社の強みにつながると思います。

 「工程は生き物だ!」とよく上司に言われました。丁寧に接すれば納期は守れるし、雑に扱えば思わぬしっぺ返しを食らうということです。なかなか難しいですね。

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