現場管理のレベルアップ(その8)

 前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。

 前回はN(Neighboring:近隣管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はO(Owner:発注者(元請)管理)の話をします。

 今回の発注者(元請)管理も私の造語で、たぶん、他の方は使っていないと思いますが、設計変更や契約変更を円滑に行うためには必要不可欠な管理です。

 発注者(元請)管理とは、基本的には契約の成立および変更、完了といった契約管理と前払金、中間金を含む出来高管理が主な内容となります。以前もお話ししたように消費税が変更されている今は特に重要な管理になっています。

 もちろん、日々の打合せや週間、月間の工程打合せを含む打合せ記録作成、質疑応答への対応、指示や協議などいわゆる打合せ簿に関する管理も含みます。契約変更や出来高はこの打合せ簿の正確さに影響を受けるからです。以前、上司から「打合せ簿はお金だからな」と言われて、なるほどと思った記憶があります。

 打合せ簿を残したから必ずしも満額回答といかないですが、ないとゼロ回答が待っているかもしれません。打合せ簿の作成は発注者管理の基本だと思います。

 発注者に対して前払金はともかく、中間金の請求手続きや中間検査後の出来高請求手続きは意外と後手に回ってしまうことが多いです。しかし、企業として1日遅れると死活問題になるような現場規模のところではそんな悠長なことはいってられません。事前準備をしっかり行って、円滑に請求する必要があります。元請との月単位の出来高請求も同様です。元請が求める出来形検査、出来高査定の書類をきちんと準備し、期限内に請求手続きができないといろいろなところに支障が来ます。

 これ以外にも各種報告や竣工図書なども広い意味で発注者管理です。最近は電子納品が完了するまで竣工検査が受けられないといったルールを課す発注者もあり、決してないがしろにできない状況になっています。

 契約も請求も現場監督にまかせきりにせずに会社全体でフォローする必要があります。そういう意味でも発注者(元請)管理を会社として仕組みにしておくことが大切だと思います。

レベル0:管理なし
 このレベルの企業は請求書は遅れるのが当たり前。契約書はどこにあるかわからない。下請けには言われたなりに支払って、元請からは言われたなりにしかもらなわないために赤字工事が続出しているといった状態です。

 次のレベルにはあがるには、現場単位で始めるのではなく、本社もしくは事務所側で契約や請求関連書類を管理してあげながら、打合せ簿を中心とした発注者とのやりとりを記録に残す仕組みづくりから始めることです。言った言わないがなくなるだけでも状況はずいぶん変わってくると思います。

レベル1:場当たり的な管理
 このレベルでは、契約や請求、打合せ記録が重要なことは分かっているが、個々の監督のレベルに依存している状態です。

 次のステップは他の管理と同様に手順書と書類の整備です。特に契約書類は現場においておくことは難しいので原本ではなくコピーを配布する、請求書式は着工時に所定の書式を事務所側で用意しておくなど手順を現場がスムーズに行える環境作りがポイントになります。

レベル2:手順がとりあえずある管理
 このレベルでは、書式や手順はありますが、全社的な管理や支援体制がない状態です。日々、現場の準備に追われている現場監督はついつい請求タイミングを忘れたり、検査準備をギリギリまで行わないことが少なくありません。せっかく手順があるのに活かせていない状況がこのレベルです。

 次のレベルに上げるにはリマインダーメールや電話による期限前の催促や重要な変更契約に関する本社(事務所)の支援体制が大切です。特に契約が変更する可能性がある現場は積極的に月例会議等に参加して、元請と接触を取ります。現場任せにしない姿勢は最終的に現場監督の教育になると思います。

レベル3:標準化された管理
 このレベルまで来ると契約管理や変更管理はある程度できてきている状態です。竣工図書もひな形を準備しており、竣工時にあわてずに済むような状況になっているはずです。

 次へのステップは他の管理同様、過去の結果を未来に活かす仕組みづくりです。成功した契約変更例、失敗した打合せ簿など竣工したら段ボールへ直行ではなく、次に生かせるように発表や勉強会を行い、全体のレベルアップを図れるようにすることが重要です。

レベル4:継続的な改善のある管理
 このレベルになると受注者視点だけでなく、発注者視点でその上を考えることも必要になってきます。発注者が市町村なら議会承認や補助金の変更申請など、より円滑に契約を行ってもらえるために受注者としてできることを考えて、動くことです。特に小さな市町村では建設分野に詳しくない人が担当者になっていることが少なくないために、用語解説から下資料づくりまで支援することが信頼を勝ち取ることになります。また、こういった積み重ねが人脈を作り現場営業といった次の工事への布石成ることもあります。

 契約や請求は現場としては一番関わりたくない部分かもしれません。相手がいい顔をしないことが多いからです。だからといって、放置すれば間違いなく会社は厳しい状態になります。俺が私が会社の代表だという気持ちをもって取り組んでください。

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