システム運用のポイント(その2)

 前回同様、システム運用のポイントについてお話しします。

2.運用コストを明確にする。

 前回は、システムの寿命を設定するための5つのポイントをお話ししましたが、そのポイントを踏まえて、寿命を決めた次のステップは運用コストを明確にすることです。

 ある調査によると新規開発コストの3倍程度の費用が運用管理と保守開発にかかっているとのことでした。比較的規模の大きな企業を対象とした調査結果でしたが、中小規模のシステムでも初期開発と同額程度の金額が運用管理や保守開発にかかることは間違いありません。

 しかし、どのようなコストがかかるのかイメージしにくいのもまた事実です。今回は保守開発も含めた運用コストを大きく3つに分けて、検討すべき内容をお話しします。

(1) システム運用、業務運用および管理人件費

 まずは、システムの監視や障害対応、バックアップといったシステム運用に関する費用です。システム監視やバックアップは比較的自動化されていますが、障害対応はその内容を明確にし、システム開発会社に情報を正確に伝えるとともに利用者に復旧までの時間や応急処置対応を知らせることが必要となり、それなりの時間と人件費が必要となります。頻度は多くないにしてもコストとしては予算を確保すべきです。また、監視やバックアップも手動に頼る部分があることも少なくないので、その時間も費用として考慮すべきでしょう。

 もう一つは利用者支援となる業務運用に関する費用です。いわゆるヘルプデスクと呼ばれる相談窓口や操作教育、マニュアル整備配布といったためにかかる費用です。開発時にできるだけ準備しておくことがポイントですが、実際には使ってみてわかることもあり、よりよいマニュアルにしていく時間は必要です。操作教育もきちんと行うことで未然にトラブルを防ぐ効果があり、ヘルプデスク自体の負担も軽くします。システム規模や利用対象者のスキル、人数に左右されますが、少なくない費用を検討する必要があります。

 最後に管理業務です。システム運用に含まれる部分もありますが運用計画の立案と実施、状況把握と改善、利用者を含むシステム関係者との調整や保守開発との調整などシステム規模が大きくなるとそれなりの人件費を割く必要が出てきます。

(2) 保守コスト

 まずはハードウェアの保守費です。最近は購入時に様々な保守オプションが提示されており、選択するだけでオンサイト(出張)修理や保証期間中の部品無料交換、ハードのリモート監視などのサービスを一括で受けることができます。開発時に寿命をきちんと設定していれば問題ないですが、あとからだとその分、保守費の追加計上が必要になるかもしれません。

 次はソフトウェアの維持費です。ソフトウェアといっても開発ソフトではなく、それを動かすための基本ソフトやミドルウェア、セキュリティソフト等のことをさします。ライセンス維持費や更新料はもちろん、バージョンアップなども費用を算定しておく必要があります。バージョンアップはシステム環境によってむやみに実施することができないですが、セキュリティ対策のためにもある程度は見込んでおく必要があります。

 次はネットワーク通信費です。外部との接触が開発会社のリモートメンテナンス(遠隔維持)だけなら、既存環境でもいいかもしれませんが複数の現場間や事務所、工場等をつなぐとなるとそれなりの通信費がかかります。ただし、これに関しては新サービスによってコストダウンが図れる場合もあるので、あくまで初期予算に甘えることなく、サービス入替も考慮しておくことが大切です。

 最後に開発ソフトの保守費です。後でのべる改修や追加開発コストではなく、瑕疵期間が終了した以降の不具合対応やハードウェア等に対する開発会社の環境維持支援のための費用です。開発完了時に提案してもらうことが多いので、それを寿命期間分見ておきます。

(3) 改修・開発コスト

 システムが動き出してから、前提となる業務が変更になったり、対象利用者の人数が変わることはよくあります。結果として、既存機能のままでは対応できない場合、改修や追加開発を行うことになります。

 算定は難しいですが、ある程度変化のある業務や利用者が増加する予測が立つのであれば、それを見越した費用を見ておくことが必要です。

 ただし、単純に費用としてみるのではなく、改修や追加開発によって得られる業務時間短縮やミス軽減などの費用対効果によって得られる収益も考慮して実施します。そのまま全部が支出ではないことも忘れないでください。

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