システム運用のポイント(その4)

 前回同様、システム運用のポイントについてお話しします。

4.運用担当者の業務を明確にする。

 システムは運用して、業務に役立ってからが本当の価値を生み出します。しかし、どうも開発に目が行きがちで、運用がないがしろにされているのが実情です。結果として、運用業務やその担当者の役割に関心が低いです。

 運用業務をきちんと定義し、業務手順をしっかり文書化しておくようにしないとノウハウがすぐに暗黙知になり、担当者以外だれもしらない使い方で業務が支えられるようになります。そして担当者がいなくなった瞬間にシステムが終わりを告げる。そんな悲劇を起こさないためにも注意すべき点をいくつか紹介します。

(1) 運用業務の定義と業務体制策定

 開発時にすべきこととして、運用業務の定義と手順書、体制の策定があります。開発時はどうしても、進捗確認やテストデータ準備マスタ整備等に時間を取られて、運用時の準備まで気が回りません。開発の前半であれば、それでもいいですが、後半にはシステム画面のプロトタイプもできてきているはずです。それらを利用して基本的な運用業務手順書の策定は行いましょう。

 また、想定される業務トラブルに対するFAQ(よくある質問と回答)は最低限、ひな形を準備してください。できれば、いくつかの想定問答が作れるといいです。

 体制に関しては、以前にもお話ししましたが、正副で必ず二人体制としましょう。会社規模でそんな人数を割り当てることができない場合は、ほかとの兼任でかまいません。大切なのは一人に情報を集めすぎないようにするということです。

(2) 運用業務時間の確保と周囲の協力

 専任であれば問題ないですが、兼任の場合、どうしても運用業務の時間を勤務中に取ることが難しいことがあります。主業務が忙しいこともありますが、運用業務の大切さを周囲の方に理解してもらえずにやむを得ず、時間外で業務を行うといった場合が少なくないと感じます。

 業務側の場合ですら、主業務を差しおいて、人に操作指導などしていたら上司ににらまれるように、システム側のバックアップやエラー確認などは理解のない上司には注意すら受けてしまいます。

 このようなことが運用担当者の負担増とシステムの利用率低下を招いていることを利用者全員が理解すべきです。そのために運用業務の重要性をトップダウンで示し、運用業務時間の確保とそのための主業務に対する周囲の協力を公的に認めるようにする仕組みが必要です。

 時間に関しては、週に1回半日とか、毎日1時間とか決めて、その時間は主業務ができないことをルール化し、それを前提に他の方の業務分担を決めるべきです。もちろん、不具合発生時にはそんな時間もいってられませんが、この時でも日頃の分担ができていれば不具合発生対応時間分、まるまる業務が残っているといった悪夢は避けられると思います。

(3) 運用業務の記録とQ&Aによるノウハウの共有

 運用業務には業務側とシステム側があることは以前お話ししました。そして、業務側が社会環境や会社方針、体制見直しにより変化していくように、システム機能の修正や追加によりシステム側も変化していきます。

 運用マニュアルがあることも大事ですが、どんなにしっかりとした運用マニュアルを開発直後につくっても、その1回限りではいずれ使えなくなります。更新していくことが大切ですがなかなかそれができません。業務とシステム双方の全体像が把握できていないと難しいからです。

 だからといってあきらめていいものではありません。運用業務を通して、気づいたことや新機能により変わったことを運用日誌のような形で最低限残すことで後任にもわかるようにしましょう。年に1度や新機能導入時にマニュアルを見直す時間が取れればなおいいです。

 また、利用者からの質問で運用者が新しいノウハウを得ることも少なくありません。そのようなQ&Aによるノウハウは最初にお話ししたFAQ用記録紙にきちんと記録を残し、定期的に情報共有を図れるよう、回覧や共有フォルダへの展開を行うようにしましょう。

 繰り返しになりますが、周囲の業務への理解と協力なしに運用は円滑にすすむことはありません。そのことを周知徹底させることが一番大切だと思います。

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