システム運用のポイント(その5)

 前回同様、システム運用のポイントについてお話しします。

5.運用業務の評価と担当者へのフォロー

 以前もお話ししましたが、運用業務は重要度が高い割に関心が低く、縁の下の力持ち的な感じになっています。また、そこで得られる知見は担当者本人にも企業にとっても貴重なものにもかかわらず軽視されていることが否めません。そのために運用業務そのものが煙たがられる存在になっています。

 情報システム部があるような企業でも評価がうまくできていない感があるので、中小企業では完全にボランティア的な感じになっているのではないでしょうか?

(1) 運用業務の評価

 前回、運用業務を明確にすることをお話ししましたが、評価もできるだけ形にしたほうが望ましいです。ある程度大きな企業で専業であれば、IPA(情報処理推進機構)が提供するシステムリファレンスマニュアルに記載されているシステム保守の指標が参考になると思います。中小企業のように兼業だと評価を形にすることも評価そのものも簡単ではないように思えますが、いくつか方法はあります。

 ひとつは利用者に対する運用評価のアンケートです。5段階評価で利用者に半期単位ぐらいでとれるといいです。もうひとつは社内のコミュニケーションツールとして使うサンクスカード(ちょっとした感謝を社員同士で伝えるカード)を利用することです。感謝の気持ちを表現するのはなかなか難しいので、最初は発信者を無記名にして書きやすくするなどの工夫をしてもいいかもしれません。

 ただし、いずれの場合も業務だから当たり前だと思って、感謝を示さない社風があればその時点で評価以前の問題になります。社長が率先して、そのような社風を育てることが大切です。

(2) 担当者へのフォロー

 また、担当者へのフォローも大切です。バックアップやメンテナンスのようなものは問題ありませんが、Q&A対応は一つ間違えると苦情処理係のような状態になります。決して担当者のせいではないのに、愚痴や不満をぶつけて、ストレス発散にしていることも少なくないように感じます。同じ社員という立場なのに業務をしているものが偉くて、運用をしているものは偉くないといった勘違いしている人も中にはいます。

 そういう人をなくすことも大事ですが、それよりは受けってしまった担当者の心のケアも含めてフォローを行える仕組みがあることが望ましいです。

 運用評価と連動させて、担当者へのヒヤリングを実施し、運用の問題点や改善したいこと、操作教育、ITスキルの課題、業務側の問題などを語ってもらう機会を作れるようにしましょう。

(3) 短期支援等による利用者側の体験

 とはいっても、なかなか運用の大変さは伝わりにくいです。大きな企業であれば、スキルアップの一環もしくはジョブローテーションの中に組み込むことでとして運用業務を体験させることが望ましいです。

 中小企業ではそういうことは難しいと思いますが、正副の担当者を決めて、定期的に正副の業務分担を入れ替えることや運用担当者の有給休暇時や出張時に利用者側に運用業務を短期間支援してもらうような仕組みをつくり、運用を体験してもらえることで重要性や大変さを認識してもらうことも担当者へのフォローや評価につながると思います。

 何度も言いますが、システムは動いて何ぼです。動かないシステムを自社にうまないよう、運用業務の大切さを社員が認識できるようにしてください。

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