在庫管理(その10)

 前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回も在庫内容を数値的に管理する手法を紹介します。

 今回は在庫日数を考慮した在庫金額で把握する方法です。一般的に在庫金額は棚卸等で確定した各材料・商品の在庫数量に単価をかけて計算します。式で表すと

 在庫金額=在庫数×単価

です。たとえば、材料Aは単価が1000円、材料Bは2000円とし、在庫数量は両方とも10個とすると在庫金額はそれぞれ

 材料A:1000円/個×10個=10000円
 材料B:2000円/個×10個=20000円

となります。一般的な在庫金額の把握はこれで問題ありません。ただし、倉庫に滞留している状況が反映されていません。そこで各材料・商品が倉庫に滞留している日数つまり在庫日数を利用します。具体的には

 在庫累積金額=在庫数×単価×在庫日数

とします。先ほどの材料A、材料Bの単価、数量はそのままで在庫日数が材料Aが30日、材料Bが10日とします。在庫累積金額はそれぞれ

 材料A:1000円/個×10個×30日=300000円
 材料B:2000円/個×10個×10日=200000円

となります。つまり、滞留期間が長いと金額が大きくなることがわかります。この数字は材料費そのものには影響しませんが、材料を購入を借入金で行った場合に金利との関係性が見えてきます。

 先ほどの例で行くと材料A、材料Bの購入費用を全部借入金でまかなうとして、在庫金額から見ると購入費用は材料Bのほうが高いです。しかし、材料Aのように長く在庫のままでいると借金返済が遅くなります。結果として金利としては在庫累積金額でわかるように材料Aのほうが高くなります。

 在庫金額を評価する際に、毎週、毎月のレベルで倉庫の中身がすべて入れ替わるような状態であれば問題ないのですが、滞留期間が半年、1年、それ以上となると支払う金利もそう小さくはありません。もちろん、滞留しているということは倉庫費用や維持費用も連動して増えていきます。実際に少額だと思っていた在庫が滞留期間が複数年だったために高額だが回転の速い在庫より高い金利を負担していたという笑えない結果がわかったこともあります。

 このように単純な数量×単価だけでは見えにくい費用を在庫日数を考慮した在庫累積金額としてみることで在庫状況を別の視点で見れるようにします。

 在庫累積金額を算定する際に注意することは入出庫のたびに変化する数量に応じて計算することです。たとえば、1か月で2回の入出庫があり、在庫数量と期間が20個で10日間、10個で20日間だった場合、単価を1000円とすると、

 (20個×10日+10個×20日)×1000円/個=400000円

とします。こうすることで月末の棚卸時にだけ多くあるような材料・商品の在庫が大きな金額にならないようします。手間がかかりそうに見えますが入出庫台帳に在庫日数と金額を入れるだけなので、そう難しくはありません。

 今回は金額で表示しましたが、単価の部分を単位重量や単位体積で計算すると運搬手間や使用空間という視点で在庫を見ることができます。

 自社の在庫で行ってみて、いつもと違う視点で在庫状況を確認してみてください。

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