在庫管理(その13)

 前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回は在庫商品の価値を評価する手法を紹介します。

 前回売上によるABC分析についてお話ししました。4回前ですが、在庫回転率についてもお話ししました。今回はそれに利益率も加味して在庫商品の評価を行います。ちょっと製造業や小売業向けの話なので、建設業ではあまりなじみがないと思いますが、外構工事や設備工事の企業で資材販売も行っているところには有用だと思います。

 この評価方法を貢献度分析といいます。商品の利益による貢献度を売上構成比率、利益率(粗利率)、回転率の3つの指標から算定します。

 売上構成比率と利益率からでも単純に利益額による比率は出すことができますが、費用面も考えることが重要です。その代表の指標として回転率を使っています。在庫回転率は在庫の需要を考慮しながら品切れをないようにするための目安となります。言い換えると在庫の効率的管理の指標とみなすことができます。他の管理費や販促費など考慮すべき費用はいろいろあると思いますが、貢献度分析ではその代表値として在庫回転率を使っているということです。

 では、具体的な手順を説明します。まずは、商品別売上高と商品別粗利益、商品別平均在庫数を調査し、一覧表にします。この場合の粗利益は企業によって異なると思いますが、一般的には売上総利益に該当するもの(売上高-売上原価)を使っているようです。

 次に前回のABC分析同様、売上構成比率を算定します。

 売上構成比率(%)=商品別売上高÷全商品売上高合計×100

 次に商品別粗利益率を算定します。

 商品別粗利益率(%)=商品別粗利益÷商品別売上高×100

 次に商品別在庫回転率を算定します。

 商品別在庫回転率(回)=商品別売上高÷商品別平均在庫数

 次に交差比率を算定します。交差比率とは利益率と平均在庫数を考慮して、効率よく利益を生み出している商品かどうかを判断する指標です。式は

 交差比率(%)=商品別粗利益率×商品別在庫回転率

 で表しますが、この式に元の算定式を代入すると売上高が分母と分子にあるため相殺され

 交差比率(%)=商品別粗利益÷商品別平均在庫数×100

と表現できます。つまり、粗利益が高く、平均在庫数が少ないほど交差比率が大きくなることがわかります。これは少ない在庫で高い利益を出すものがより望ましいとの考え方です。少ない在庫のほうがかかる維持費用も用意すべき購入資金も少ないという点からですが回数が増えることによる入出庫や支払の手間は考慮されていない点は注意が必要です。

 最後に商品貢献度を売上構成比率と交差比率より算定します。

 商品貢献度(%)=売上構成比率×交差比率

 これで、企業全体での売上および利益や費用を考慮した貢献度を確認し、大きいものほど貢献度が高いと判断します。実際算定すると思いもしなかった商品が上位に位置づけられたりします。ABC分析結果と異なることが多いです。つまり、売れ筋と利益貢献をしている商品が異なっているということです。これができるだけ同じほうが望ましいですが、現実はなかなかその通りにはいきません。なお、単位を%と表記はしていますが数字は100を超えるかなり大きいものになります。

 今回は商品別としましたが、部門別や顧客別でも同様のことができます。伸ばすべき商品や分野を判断する一つの指標として使ってみてください。

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