在庫低減(その6)

 今回も在庫低減のお話しをしていきます。今回は在庫削減の手順についてです。

 前回までに在庫低減の最初の一歩から改善対象、考慮すべき視点についてお話ししました。在庫管理でもお話ししましたが、在庫は入口側(入庫)も出口側(出庫)もきちんとできていないと十分な改善を行うことができません。そのことを踏まえながら、7つのステップで進めていきます。

(1) 在庫削減の目標設定

 まずは削減目標の設定です。以前にお話ししたように材料的視点および業務的視点で効果の高い在庫品を中心に目標を設定します。

 もちろん、設定前に廃番基準や保有すべき在庫量を決めておく必要があります。これがないとそもそも削減対象となる在庫品を選べないからです。

 目標対象数は、最初は数種類程度から初めて、徐々に広げていくことをお勧めします。決めることが難しい場合は在庫日数を考慮した金額や貢献度分析などで影響力の高い在庫品を見つけましょう。

 在庫品を選定したら目安となる削減量を決めます。具体的な数量が設定できない場合は現状の何割といった形でとりあえず設定します。

(2) 対象の在庫状況の分析と問題点把握

 削減対象がきまったら、現状を分析します。1回の入出庫量や月間を通した入出庫状況などシステムや記録簿から拾えるデータを使って在庫回転率や流動数分析などを実施します。

 また、倉庫内での動きも確認しておきます。入出庫が頻繁に行われているものであれば、仮置きや複数個所への入庫など倉庫内での課題も少なからずあるからです。

(3) 対象の在庫前後の分析と問題点把握

 ある程度の傾向がつかめたら、対象の入出庫の外側の動きを調べていきます。具体的には入口側である購入(もしくは生産・加工)、出口側である出荷の内容です。

 購入ロットと出荷ロットの数の違いや入庫までのリードタイムが長いことなど在庫に余剰を持たさざるを得ない理由があるはずです。計画面・調達面・物流面・出荷面・システム面といった様々な視点から課題を見つけ出していきましょう。

(4) 対象の低減策立案

 在庫の現状とその前後の状況が把握できた段階で低減策を立案します。最初は個々の課題に対する対策を出していきます。その後、内容的には長期的な策と短期的な策、社内できる策と社外も巻きこむ策といった感じでいくつかのセグメントに分けて対策を整理統合していきます。

 視点ごとに対策を立てているとどうしても同じ担当で少し違う対策を立てることがあります。そのままにしておくと実施効率が悪い対策になります。逆に視点を無視して最初から担当者ありきで対策を検討すると視点が不足した効果の低い対策になります。いろいろな視点から対策を検討したのち、整理統合することが望ましいです。

 優先順位は緊急性(時間制限、法的制約がある)・容易性(簡単にできる)・有効性(対策の効果が高い)といった視点で評価しながら、決めていきます。

 対策は内容だけでなく、実施頻度や実施担当、フォロー担当といった役割・体制も忘れずに決めましょう。

(5) 対策の具体的な実施

 上記の対策を実施していきます。当然、実施記録をとり、定期的に内容を確認します。成果指標はもちろん低減した在庫数となります。実施前の平均在庫をもとに数量もしくは割合で算出した目標値との差異を確認します。

(6) 振返りと対策改善

 対策はすべて効果が出るとは限りません。3ヶ月もしくは6ヶ月の実施後、成果を振り返り、対策を続けるのか、対策を改善するのか、やめて新しい対策を実施するのかを判断します。低減対策で一番よくないのがダラダラととりあえず続けることです。振り返りの時期をきちんと設定し、効果ある対策に改善していきましょう。

(7) 目標達成と評価・褒賞

 設定した目標に達成した段階で対策の評価と関係者への褒賞を検討します。事前に褒賞を算定し、明示することで関係者のやる気を促す方法もありますが、最初のうちは効果を金額にすることが難しいので、金一封という形でスタートし、徐々に低減効果の換算金額の1割といった形で目に見えるようにするといいと思います。

 7ステップ終われば、次の対象在庫品を選び、ステップ1からを繰り返す形で自社内に低減作業を定着化させていくことが最終的な目的です。

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