営業管理(その3)

今回も営業管理についてお話しします。今回は案件管理についてお話しします。

2.案件管理

案件というのは受注する前の工事のことを指しています。一般的な辞書で調べると案件とは「問題となっている事柄」ですが、建設業を含む営業での用語としては「まだ契約が決まっていない取引」といった感じです。英語では一般のほうが「matter(直訳で問題)」営業のほうが「opportunity(直訳で機会)」というそうなので、やはり意味が違うようです。

さて、おまけの話はそこまでにして、建設業での案件入手は公共工事と民間工事では大きく異なります。

公共工事では案件といえば、入札情報です。最近は電子入札が普及したおかげで入札情報も比較的入手しやすくなりました。各地方公共団体が提供するサイトで公示させる情報を事務所にいながら入手できます。それだけでは準備は他社と横一線なので、議会の記録や全国の動向も踏まえておく必要があります。補助金制度や予算の変化も把握しておくことをお勧めします。ここから入札のきっかけになるものが出てくることもあります。

民間工事であれば、営業活動による情報収集が基本になります。リフォームのような分野では、展示会のアンケートやその後フォローも含めた営業活動以外に、既存顧客からの紹介情報も重要になってきます。入手ルートを明確にして、定期的にアクションを起こす仕組みづくりが民間工事での案件管理の第1歩です。公共工事と同様に補助金制度の動向も要注意です。以前も話しましたが、消費税UP対策のような景気浮揚策にはたいてい住宅関連の制度がついて回ります。ここをいち早くつかんで営業に利用することも案件を作り出すことに結びつきます。

いずれにしても、案件情報が入手出来たら、所定の書式に必要な情報を記載して、受注・失注が判明するまで管理していきます。

公共工事は、情報入手後、積算、入札・落札と管理ポイントが比較的シンプルです。もちろん、提案型だったり、技術者の指定等がある場合は細かい管理が必要になりますが、小規模な工事が中心であれば、発注者、工事名、入札期限、担当者、結果程度があるだけでも管理はしやすくなります。

民間工事は、情報入手経路が多岐にわたることから情報入手の分類からヒヤリング、現地訪問・調査、提案、見積、契約といったステップごとの管理も必要になります。公共工事より細かい情報管理を意識してください。

また、このステップには必ず期限というものが必須です。たとえば、リフォームであれば、現地調査から提案までが長いと検討している方は他社に流れてしまいます。

特に企業規模の小さい建設会社では、営業専任が少ないだけでなく、この期限設定ができておらず、ヒヤリング後の調査や提案が遅れて、失注しているといった話を聞きます。できれば、管理表を作成するだけでなく、期限の基準を決め、遅延に対する注意喚起をできる仕組みづくりもセットで考える必要があります。

最近はリマインダー機能の付いたサービスがいろいろあるので、期限を社内ルールで決めたら、このようなサービスを活用することで遅延防止ができます。もちろん、専用の営業進捗管理サービスを利用すると便利な機能がいっぱいついていますがなかなか使いこなせていないのが実態のようです。できれば、最初は簡易なサービスから始めることをお勧めします。この方法についてはまた別の機会にお話しします。

では、案件管理は受注したら、着工情報として施工部隊に情報を移管し、失注したら失注情報としてまとめるので終わりでしょうか。
いえ、違います。

やはり、半年や年に1回は受注理由・失注理由を振り返り、次回に活かせるようにすることが大切です。いわゆるPDCAです。

そして、振り返りだけでなく、自社の施工能力や施工実績も踏まえた情報管理をすることが望ましいです。しかしそこまではなかなかできません。特に過去の受注実績を整理して、入札内容から原価を簡易算定するような仕組みをもっているような企業は少ないです。

大規模な工事であれば、毎回条件が異なり、詳細な見積を行わなければ難しいと思いますが、年度単位で発注される同じ工種で同じ規模の工事であれば、現地の特殊な条件を考慮して、ある程度利益に見合った金額を算定することができる部分はあるはずです。実績を整理すればそんなに難しくなくできます。部位や工種にわけて組み合わせを作る程度の仕組みです。算定結果が営業の概算見積に使えるようになります。顧客の一番の関心ごとですからとても重要なはずなのは理解しているはずですが、できていないです。

営業が最初に発した金額は民間工事であれば、大きな縛りになることがありますが、この数字が精度が高くないことが失注の理由の一つになっていると思います。個別工事原価管理ができないと難しいのですが、振り返りと簡易算定(営業担当者が大きなはずれのない金額を言える)仕組みも入れておくことが成約率をあげるポイントだと思います。

PDCAを回せる仕組みと原価管理の結果をつなげる仕組みの2つが案件管理では必要です。

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