建設業におけるクラウドサービス(その3)

今回も引き続き建設業におけるクラウドサービスについてお話しします。今回はサービスの始め方についてお話しします。

クラウドサービスがなんとなく便利で、いろいろなことができそうだというのは前回、前々回で少しわかっていただけたと思いますが、実際に体験してみないと実感がわかないのが普通です。どんなことを意識して始めたらよいか3つのキーワードでお話しします。

1.現場との情報のやりとりから

まずは、一般的なクラウドサービスの利用理由からお話します。全般的にクラウドサービスを利用したい上位の理由は「資産や保有体制を社内に持つ必要がない」「初期導入コストが安価だったから」「安定運用、可用性が高い」「既存システムよりコストが安いから」といった感じで導入や運用視点での理由が多いです。やはり、利用者視点からすると「どこでもサービスが利用できる」が一番だと思います。(調査結果では第3位)

特に社内に限らず、社外のいたるところで使えるのはとても魅力的です。昔ならインターネット接続環境やアプリの動作環境が整えるための制約というか準備が結構あったのですが、今はスマホやタブレットでその制約・準備はないに等しい状況になっています。

建設業のように社外で多くの社員や関係企業が働く業種ではクラウドサービスはまさにうってつけのサービスだと思います。逆にいうと建設業でのクラウドサービスの始め方は一番効果が期待できる社外の代表格である「工事現場」との情報発信・情報共有・情報活用を前提に利用を考えたほうがいいということです。

他の業種なら、在宅勤務や営業の出先といった選択肢もありますが、建設業は「現場」で利用できることを最初に考えるのが一番いいと思います。

2.既存業務のお困りごとから

次に対象となる業務です。クラウドサービスとい新しい言葉を聞くとついつい新しい業務を考えてしまいがちです。今までできていなかった情報共有や不十分だった原価情報の収集といった話が良く出てきますが業務基準・手順・体制が十分に検討されないまま、始めると大抵うまくいきません。

結果として「クラウドサービスは使えない」といつ理不尽な印象を持たれてしまいます。サービスが悪いのではなく、業務側に問題があることに意外と認識がいかないようです。

なので、新しいこと(業務)を始めるのではなく、既存業務での困りごとを解決するための一つの手法として始めることをお勧めしています。それもある業務の全部ではなく、ほんの一部だけでもいいので簡単でできるところから始めるのです。

例えば、月報や請求書等の提出物がなかなかでない。現場での安全ルールの周知徹底が図れない、全員が必携したいのにかさばって持てない業務資料集といったお困りごとがあったときといった今のお困りごとを解決する手段としてクラウドサービスを利用しましょう。

ただし、全部のお困りごとを解決するような手段として考えるのではなく、まずは月報だけとか、安全ルールも高所作業に限定してとか業務資料集もまずは緊急連絡先だけとかいった部分的な内容で始めてみましょう。

「クラウドサービスって便利だな」と利用者側が思わない限りは利用は進みません。その点を意識して、お困りごとの解決手段の一部として始めてみましょう。

3.無料でイメージしやすいサービスから

利用が進むかどうかわからないクラウドサービスにコストをあまりかけられないのはやむをないことです。なので、まずは機能を多少犠牲にしても、無料サービスから始めることをお勧めしています。

もちろん、長期的な利用を考えるのであれば、無料プランと有料プランがあるようなサービスがいいです。お試しであれば、使い勝手のよさそうな感じがする見た目重視でもいいでしょう。

内容的にはサービスとしてイメージしやすい表計算、文書作成、スケジュール共有、ファイル共有といったところから始めてはいかがでしょうか。

・Googleドキュメント、Office Online(商用利用は閲覧のみ)
・Yahooカレンダー、Googleカレンダー
・Dropbox、OneDrive

といったものがサービスとして候補に挙がると思います。この中で設定は必要ですがユーザーの負担感が少なく、効果を感じやすいと思うのはDropbox、OneDriveといったオンラインストレージサービスです。共有フォルダに保存するとすぐに共有している全員にファイルが配布される仕組みは初めて使った時には衝撃的でした。

例えば、現場でスマホで撮った写真をDropbox アプリに保存するだけで関係者への送付はしなくてもいいですし、現場から事務所に戻ったら所定のフォルダに写真が入っています。バックアップという観点でもクラウド上にデータがあるのは大きいです。間違って削除しても復元機能がついていますので、すぐであれば安心して戻せます。

写真の自動保存っていう便利な機能もあります。ただし、プライベートな写真も関係なく保存される、通信量は増えるといった問題もあるので自動保存はあまりお勧めしていません。

新しいことは習慣づけることが一番大変です。そのためにできるだけすぐに使えるイメージのしやすい(もっと言うとサービスを意識しないで済む)ものから始めましょう。

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