公式サイト構築・再構築(技術編)(その1)

前回まで掲載内容の具体的な話をしてきました。公式サイト構築(再構築)(その4)の時にも少しお話ししましたが今回からは最近のWebでの動向を踏まえた技術的なお話しをしていきます。

サイト構築もしくは再構築のコンセプト(方針)とコンテンツ(内容)は前回までで一区切りで、制作会社に発注するための資料を作成することはできると思います。

以前もお話ししたように制作会社が技術的に最新の情報をもっているかというと残念ながら持っていない可能性があります。特に規模の小さな制作会社であればあるほど個人の技術力に依存しているので、その傾向が高くなります。そのため、発注する側でも基本的な知識や単語は知っておいた方がいいです。

今回はWebアクセシビリティについてお話しします。Webアクセシビリティとは、Webサイトでの掲載内容やサービスへの利用しやすさのことをいいます。

高齢者や障碍者はもちろんですが、ブラウザの操作が不得手な人に対しても使いやすさを提供することになります。つまり、Webアクセシビリティを向上させたサイトを提供することでより多くの方に必要な情報を提供できるようになるということです。建設業ではバリアフリー法のようなアクセシビリティに対する考え方があるので、比較的理解しやすいのではないかと思います。技術そのものは制作会社にお任せしますが発注側として示すべき方針の作り方は知っておきたいですね。

まず、デザイン面で様々な人に対して利用しやすさを考える用語として「インクルーシブデザイン」という言葉があります。高齢者や障碍者、海外の方といったついついデザイン設計の段階で閲覧対象者から外している人々を含んでデザインを考えるという手法です。

もう一つの用語はみんなの公共サイト運用ガイドラインにも掲載されているJIS X8341-3「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」です。これはISO/IEC 40500という国際規格に準拠した内容ですので全世界共通のものです。詳細はJISのサイトを見てもらうとして、この中でのポイントは達成基準というのがA,AA,AAAの3段階あるということです。ちなみに「みんなの公共サイト運用ガイドライン」では公共サイト(公共機関の公式サイト)はAAを目指しましょうといわれています。基準としてはAが25、AAが13、AAAが23項目あり、AAはAを満たす、AAAはA、AAを満たすことなのでAAAは61項目を満たすことが必要になります。少し例をあげると

<適合レベルA>
・画像や動画等に代替テキストを提供する。
・動画の音声情報を字幕として提供する。
・全てのコンテンツをキーボードのみで操作可能にする。
・色だけで動作を示すような視覚的手段にしてはいけない。

<適合レベルAA>
・動画に音声解説を提供する。
・テキストは、機能やデザインを損なうことなく200%まで拡大でき るようにする。
・文字画像ではなくテキストで情報提供する。
・文字のコントラスト比を4.5:1以上にする。ただし、大きな文 字は3:1以上でもよい

といった感じです。

他の基準も見るとわかりますが、音声読み上げソフトをつけるとか文字拡大ボタンを付けるとか、色変更をできるようにするという支援機能を定義しているわけではありません。以前は必要だったかもしれませんが、今はOS側や利用者側である程度基本的な機能を用意しています。これからのサイトはそれらの機能がきちんと作動するように丁寧な造りにすることが大切なのです。

では、具体的にはどうやって作るか。その作り方の代表的な手法がSEO(検索エンジン最適化)を意識した制作です。なぜならば、検索エンジンが自分のサイトを見るために使うツールはロボットと呼ばれるプログラムだからです。そのロボットが掲載内容を読みやすくするのがSEOの目的の1つですが、結果的に支援機能で使っているプログラムもその考えと類似しています。つまり、SEOをきちんと行うことで最終的にはアクセシビリティも向上させることができるということです。

もちろん、SEOだけではデザイン面のコントラストは実現できません。例えば、文字サイズの可変性を考えるであれば、スマホやタブレット、パソコンのどれでも見やすいようにするレスポンシブウェブを意識すればOKです。また、色覚異常への配慮は、モノクロでの印刷しても内容がきちんとわかるものにすればいいです。実はこれプレゼン資料の作成でも同じことが言えるので単にWebだけではないことを覚えておきましょう。

オマケの話ですが、JIS8341の8341は8や3さ4し1いからきているそうです。ちょっとおしゃれですね。

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