経営改善と業務改善(その2)

前回に引き続き、経営改善と業務改善についてお話します。

前回は経営改善と業務改善の大きな違いについてお話をしました。経営改善は利益確保が主目的となり、その障害となっている経営課題を見つけ出して、取り除くという作業が主たる作業であり、経営者の関与はもちろん、会社全体の取り組みです。一方、業務改善は品質向上、費用削減、納期短縮、安全向上が主目的で業務自体をよりよい状態にすることが主たる作業であり、関係者が限定されています。

もう少し違いをいうと、業務改善は業務ありきで進めますが、経営改善は業務自体の見直し(業務をなくすこともあり)も含まれます。また、経営改善は経営者がメインとなり、トップダウンで進めますが、業務改善は業務担当者がメインとなり、ボトムアップで進めます。さらに経営改善は利益向上は原則ついて回りますが、業務改善は主目的が安全向上だと、コストアップになる場合もあるので、利益向上と直結しないこともあります。(最終的には社員のけがや事故がなくなることによる生産性向上が見込めることが多いですが・・・)

つまり、経営改善のほうが対象範囲が広いので、業務改善ではできないこともできます。まず筆頭として挙げられるのが、業務(手順・基準・分掌)を全面的に見直すところです。もちろん、業務改善の中でも業務をなくすとかまとめるとか入れ替えるといったことはできますが、複数部署が関係する業務にはなかなか手がつけにくいです。経営改善ではこの部分にも手を付けることが可能となります。部署を超えて担当そのものを変える(分掌変更)とか、複数部署の関わる手順を一部もしくは全部なくすといったことは経営改善の範疇です。

また、ターゲット顧客の変更といったことも経営改善の視点です。収益向上のために法人客だけでなく、個人客も視野に入れる。建設業でいうと公共工事主体から民間工事も考慮するといったものは、業務改善のレベルではありません。(提案はできそうですが・・・)

財務指標の把握とそれをもとにした改善目標の設定も経営改善ならではです。財務指標から業務指標に展開して、つないだ形で管理することは簡単ではないですし、数値管理が目的になりがちなので、注意が必要ですが利益向上を業務レベルで見える形にするのには有効です。

改善目標は業務的な指標(不良率低下、原価率低減、納期精度向上、事故率低下)といったものでもいいのですが、せっかく利益と連動するのですから、給与系との連動があることが望ましいです。企業によっては、この改善が達成したら、給与を○%あげるとか、賞与(ボーナスとか寸志の場合もあり)で還元するとかいう目標もあります。コスト削減を実現した場合、そのコスト削減金額の半年分を関係者に還元といった企業もあるようです。このような目標は経営者が関与せずには無理なのはご理解いただけると思います。

また、会社の規則変更も実は経営改善としての重要な対象です。最近は「働き方改革」で特に注目を浴びていますが、それを実現するには会社の規則を見直すことが必要です。もちろん、規則まで行かなくても、なんとなく引き継がれていた慣習を見直すだけでも大きく変わることがあります。

これはある企業の例ですが、2つの工場でのほぼ同じような製品を同じぐらいの時間で同じ量作っていたにも関わらず、一方だけ残業が発生していたのを調査したところ、休み時間を10時と15時、一方は15分、もう一方は30分とっていたのです。休みを取ることは決めていても時間が決まっていなかったために、差が生じたようです。すぐに15分に統一したところ、残業がなくなりました。

これは業務の手順も分掌も変えずに、基準だけ変えただけで成果が出た事例ですが、業務改善の視点では部署内の常識は変えることが難しいです。

また、昼休みの時間を電話の受付の対応のために2時間とっていたら、いつの間にか電話受付の目的が忘れられ、2時間休んでいる人がいた例もありました。結果、電話がつながらないとの苦情がお客様より発生し、気づいた次第です。電話対応の早番と遅番を決めたことですぐに解決しましたが、こちらは基準を追加しただけで改善した事例です。

業務改善では手順には手を付けるものの基準や分掌(役割分担)にはなかなか手を付けることができません。そこに手を付けることが経営改善の大きな役割だと思います。経営改善は会社の当たり前を疑うところから始めることが肝要です。

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