「GPS」をご存知ですか。略語コーナーにもまとめておきましたが、今やカーナビに携帯、船舶、パソコン用まで幅広く使われています。 登山や迷子捜索にと、幅広い用途のあるGPS。 測量用として使えることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
もともとGPSは、米国の軍事用に開発された測位システムでした。民間に開放されたのは、1983年、大韓航空機のソ連領空侵犯による撃墜事故からです。民間用として無料で利用できるものは、精度を意図的に下げています。よって、単純に衛星からの受信で100m程度の誤差を含んでいます。
皆さんご存知のカーナビ等は、D-GPS (略語参照)というもので、誤差1m前後にまで収まります。地図上で2次元的に位置を把握するのには充分ですが、測量の精度としては心もとないですね。
ただし、静止測量といって、1点に数時間おいておき、コンマ何秒の単位で連続測量を行う場合は、測量結果が収束するたので、数mm未満の精度が出ます。山の中で通常測量が困難な場合はこの測量で基準点を定めることがあります。
ちなみに国土地理院では、電子基準点といって、日本全体で1224点のGPSを使った基準点を持っていいます。地震による地殻変動で日本の形状が変化するのを、基準点のずれから把握するわけです。
実際の測量では、「RTK?GPS」というものを使用します。これは、受信の精度をさらに上げ、即時( 3分以内)に誤差10mm?20mmの精度で測量できる機械です。
建築の建物や小規模構造物の測量には向きませんが、工大規模造成工事のような、機械精度がcm単位の施工においては、大きな実力を発揮します。 第二東名の大規模盛土や、中部新空港・関西新空港の埋戻しで、GPS測量は大活躍しています。 3次元CADとの連動で、その日のうちに正確な埋戻し量が把握できるので
す。 わたしも、かつてそのひとつに参画していましたが、ただ測量したい場所に立っているだけで、たちどころに座標が表示されるのは感動ものでした。ただ、まだまだ機械が高価なので、小規模なところへの導入は難しいようです。
GPSは、無人機械施工や自動地形測量等でも使います。無人化による重機災害防止や、オペ不足対策にもなります。 少々話が逸れますが、特許関係を調べていたとき、田植え機の自動施工(予め田んぼの地理情報与えておき、苗を植える場所を緯度・経度で与えて田植えをする)の資料が目にとまりました。高齢化する農業での人手不足にも一役買っているようです。
現在、GPSは米国独占ですが、同様のシステムは
・ロシア(GLONASS ぐろーなす)
[Global Navigation Satellite System]
・日本(準天頂衛星システム)
・EU、中国、インド他(ガリレオ)
と開発中です。今後、補正情報を流す基準点が全国で整備され、上記システムが連動して使えるようになれば、ますます精度が向上し便利になるでしょう。まだまだ過渡期だと思いますが、今後のキーワードとしてぜひ覚えておいてください。