今回は情報共有がテーマです。情報共有といっても広義のものではなく、CALS/ECにおける「工事施工中の情報共有」についてです。
具体的な内容については、残念ながら国土交通省のホームページには書いていませんので、JACIC((財)日本建設情報総合センター)に掲載されている「工事施工中における工事施工中における受発注者間の情報共有システム機能要件(案)(Rev1.1)」の概要と機能要件を参考にお話しましょう。
上記の書類中、工事施工中の情報共有システムは、「工事施工中に受発注者間でやりとりする情報を、インターネット経由で交換・共有するシステム」と定義されています。機能としては、
・データ登録・表示・検索
・工事関係書類作成支援、文書管理、電子納品支援
・スケジュール管理
・アクセス制御機能
・ワークフロー(はんこを押す順番に文書が回る機能)
等です。つまり、現在言われている情報共有とは、「現状では中間検査、竣工検査のときにまとめて出している電子納品対象書類を、できるだけリアルタイムで出しましょう」という仕組みなのです。「情報共有」よりむしろ「書類送受信システム」というほうが適切な気がします。
また、メリットとしては
(1)電子納品の効率化
(2)移動時間の短縮
(3)文書管理の効率化
が挙げられています。しかし、1番目と3番目は電子納品の実施により得られるものですから、2番目が情報共有としてのメリットです。担当事務所から離れた現場では有効でしょうが、これだけでは、メリットとは言い難いのではないでしょうか。
いっぽう、中国地方整備局の工事情報共有システムの説明では、下記のような機能がついています。
・工事打合せ簿確認・作成機能
・立会予定確認・作成機能
・電子納品用ファイル一括ダウンロード機能
・様式ダウンロード機能
・掲示板機能
・工程管理機能
これらは、JACICの内容から一歩踏み込んだ機能になっていますが、厳しい見かたをすれば、書類の送受信システムに若干のグループウェア機能がついたレベ ルですね。もちろん、掲示板機能や工程管理機能を上手に使うことで、効率よい立会いが可能にはなるでしょう。しかし、一現場内での情報共有では限界があり ます。まだ試験運用の段階なのでやむをえないかもしれませんが、受注者側としては今一歩メリットが見えません。
受注者側がメリットを出すためには、2つの要望があります。
ひとつは、データ検索機能の充実です。それも自分の現場ではなく他現場における類似工事の資料を検索できる機能です。新技術の適用結果や各種試験施工の情報、施工計画書や手順書のひな型などは、施工書類作成の大きな力となるでしょう。もちろん、著作権や特許等の問題はありますが、利用規約をもうけて積極的な情報共有・情報活用ができるようにしていただきたいと思います。
もうひとつは、ワークフローです。以前情報共有システムを試みた際、ワークフローで多くの方(現場・得意先あわせて10名)を1本の道でつなぎました。そのため、審査承認が全員に回るまでに多くの時間を要し、とてもリアルタイムとはいえない状況になってしまいました。できれば、閲覧者と審査者・承認者を分離し、4,5名程度の登録で済むような体制を整えていただきたいのです。迅速な対応ができる仕組みになり、スケュール機能で監督員の都合のよい時間を把握でき、現場の進捗と調整しながら立会い、検査記録もスムーズに審査・承認できる。そうなれば、とても助かるのではないでしょうか。
CALS/ECにおける情報共有はこれからですが、よりよいものにして、受発注者双方にメリットがあるといいですね。