CALS/ECの動向(2009)

 今年3月31日に、国土交通省 CALS/ECアクションプログラム2008が発表されました。いよいよ、全市町村へのCALS/EC導入に向けての最終プログラムです。このプログラムに伴い、CALS/EC推進会議の第1回が行われ、電子納品ガイドラインも改訂されました。

 第1回CALS/EC推進会議の資料に、現状の問題点が分かりやすく書いてありました。いくつか紹介すると

◆電子納品について
・工事・業務終了時に電子納品しているが、次の工事や業務に有効に使われていない。
・納品仕様が徹底されておらず、様々な仕様のCADデータが納品されている。
◆品質検査について
・設計や現場で得られる電子データを紙ベースに印刷するなど、監督・検査に対しては紙ベースの資料が用いられており、電子媒体での納品と合わせ二重納品となっている。(多量の紙資源を使用している。)
・現場での打合せでは、必要となりそうな資料を紙ベースで用意し、資料一式をもった現場での対応となっている。
◆技術者の育成について
・現場でCALS/ECを推進する技術者が不足している。

・普及を考慮したCALS/EC関連技術基準が未整備。
・CALS/EC高度化のための民力活用が停滞している。

となっており、2001年のCALS/EC開始当初からの問題が引き続いている感が強いです。

 実際に私が支援現場を通して感じることは、比較的早い段階で始めている旧公団や地方公共団体などでも、担当者レベルでは、2009年現在ほとんど理解していない状況が見受けられ、未だ紙と電子データの二重納品を強いることが少なくありません。

 そして、これらの問題は、現在の各種基準にあるのではなく、それを十分に理解し活用できていない点だと思います。まさに「仏作って魂入れず」。行政に限らず企業でも、システム作りやルール作りには一生懸命で立派なものを作るのですが、できてしまってからの活用・遵守が不得意なようです。

 今回のアクションプログラムでは、以下の目標が設定されました。

目標1 入札契約書類の完全電子化による手続きの効率化
目標2 受発注者間のコミュニケーションの円滑化
目標3 調査・計画・設計・施工・管理を通じて利用可能な電子デ
     ータの利活用
目標4 情報化施工の普及推進による工事の品質向上
目標5 電子納品化に対応した品質検査技術の開発
目標6 CALS/EC の普及

 中でも、ぜひ積極的に推進していただきたいのが、目標6です。まずは、電子納品や電子入札の講習会をより大々的に行い、それに対する補助金等の支援策をもうけて、環境づくりを行うべきでしょう。企業でも今一度検討すべきです。

 次に、事前協議を義務付けるような方策や仕様改訂を行い、設計や工事の早い段階で、電子納品に対応した書類・図面作りを行う業務の流れをつくりましょう。事前協議は、きちんとやればやるほど効果が大きく、設計完了時や竣工時の負荷が小さくなります。しかし、行われていないことがまだまだ多く、竣工間際になって慌てる現場が少なくありません。

 最後に、電子納品に対して納品精度を点数化し、入札や工事評価へのインセンティブを与えるような仕組みを考えていくべきだと思います。まだまだ、建設業のITレベルにおいては、現在の電子納品はハードルが高く、現場の負荷は甚大です。だからこそ、きちんとした納品にはそれなりのインセンティブがあるべきです。誰もが容易に出来る環境が普及するまでは、電子納品の労力も正当に評価されるべきでしょう。電子納品は、サービスではないと思います。

 3次元の利用や補修や検査、利用など、やるべきことはまだいろいろありますが、まずは普及が大事です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする