最近、中小企業でよくお話を聞くのがベテランの退職による人材不足です。何年も前からわかっていたことなのに、ついつい後回しにしていたツケが一気に回っている状態です。
ISO導入企業でも、教育訓練計画は策定しているにもかかわらず、実施が不十分であるところが少なくありません。どの企業も即戦力と中途採用を進めていますが、どの企業も教育する手を抜いているために中途採用でも戦力になりにくい人が増えているようです。
結果的に自社で一からきちんと育てることが最終的に自社の人材不足を解決することになるということにようやく企業も気づいて、遅まきながら着手を始めているといったことが現状でしょう。
もう一つ、私が感じることは教育と訓練をきちんとバランスよく計画・実施していない企業が多いということです。ここでいう教育は少し狭い意味で使っています。具体的に言うと
教育・・・知らないことを教える
訓練・・・知っていることを体で覚えてもらう
ということです。つまり、以前お話ししたOffJT(業務外教育)とOJT(業務内教育)とのバランスということです。
即戦力との期待や教育費用の削減、業務を通して覚えたほうが体に身に付きやすいといった中途半端な職人意識がOJT中心の教育体制にしているようです。上記で書いたように「知っていること」を体で覚えるためにはまずは「知らないこと」を教えてもらって「知っていること」にしなくてはいけません。そこが抜け落ちていることがとても多いです。
では、このためにやるべき最初のことはなんでしょうか。それは、業務に必要な知識を体系化した「スキルマップ」の作成だと思います。昨今話題にのぼる「ジョブカード」もこの「スキルマップ」なしには成立しません。次に社員のスキル確認を行うことになります。
これらは、イントラネットでマップを掲載したり、簡易なチェックシステムを作ることで容易に情報展開や収集を行うことができます。「パソコンは一人一台ではないんだけど」という企業でも一人一台の携帯電話を活用することで対応することもできます。
スキルマップと社員のスキル評価のもと、必要な教育と訓練を抽出して計画を立て教育と訓練をバランスよく実施する。これが無駄なく無理なくムラなく人材を育成するために必要なことなのです。
「かといって集合教育の時間を作るのは業務の関係上難しいんだけど」といわれる企業もあるでしょう。少人数での多店舗展開を行っていたり、小規模現場が多くある企業では、社員が現場を離れること自体が困難なことがあります。
そのために活躍するのが「Webラーニング」と呼ばれる「オンライン学習システム」です。無料で学べるサイトもありますし、自社で構築できるような仕組みもあります。テキストを読ませるだけならば、PDF化して、イントラネットに掲載でも十分効果があります。これらの資料や手法は既にOJTで習ったバラバラの知識をつなぎ合わせるのにも役に立ちます。
「イントラネット構築するのはちょっと難しい」という企業には、オンラインストレージを使った共有フォルダにテキストや資料を保存して使ってもらうというような方法もあります。
少し準備は必要ですが、UstreamやYouTubeのような動画配信サービスを利用して、ビデオ学習をさせることもできます。質疑応答が必要ならSkypeのようなビデオ電話の活用もできるでしょう。昔なら高額な費用が掛かった仕組みが低価格な機材で簡単にできる時代になっているのです。
中小企業での教育する側の人材不足や時間や場所などの環境不備はITを活用することで最小限にすることができます。ぜひ、IT活用を前提としたもう一歩上の人材育成を考えてみてください。