前回までに無線LANの種類や機器、セキュリティのお話をしてきました。今回はそれらの知識があることを前提として、現場での無線LAN設置について話します。
1.事務所内での利用
事務所内での利用は一番一般的な使い方だと思います。特に現場事務所と本社とでノートパソコンを持ち運びされている方には、バッテリーさえ持てば、電源ケーブル、LANケーブルといった線をつなぐことなく、インターネット環境を利用できるのは大きなメリットだと思います。また、最近は協力業者さんがメールや業務報告のためにインターネット環境を借りたいとか、測定記録や日報を印刷するためにプリンターを一時的に借りたいなどの要望も増えてきています。このようなときにも無線LAN環境があれば、とても便利です。会議室のように、いつもはパソコンを使わないが安全集会や勉強会のときだけ使うような場所にも向いています。もちろん、同じ建屋内ならばケーブルを引き回しても問題ありませんが、打合詰所だけ別だとか、違う階なんてことも少なくありません。そのようなときには導入を検討する価値はあると思います。逆にパソコンが常設されたり、事前に必要なケーブルを配線できるような事務所においては、わざわざ無線LANにするメリットは少ないかもしれ
ません。
JVを組んでいる事務所では、無線LANの基本的なセキュリティ以外にも自社しかアクセスできないエリアに対するアクセス制限を考慮する必要があります。協力業者さんが使う場合は、アクセス制限はもちろんですが、MACアドレスによる接続できるパソコンの制限やSSIDの定期的な変更など簡易に出来るセキュリティ対
策はぜひ行いましょう。本格的には認証サーバを設置し、ユーザーIDとパスワードによる接続制限を行うこともできますが、費用がかかることと設定技術もそれなりに必要です。むしろ、JVでのネット環境であればレイヤー3スイッチによるVLAN構築を行っている場合が多いので、こちらでアクセス制限を行うほうがいいと思います。ただし、専門知識が必要なので、できればJV事務所構築時に専門業者にまとめて設定してもらうようにしてもらいましょう。
2.施工現場での利用
計測管理データを事務所に送信したり、現場詰所と事務所で書類のやりとりを行いたいときに無線LANがあると便利です。ただし、現場詰所と事務所との間に障害物があったり、距離がとても遠かったりすると中継局が必要になるため、それなりに費用がかかります。実際には中継局の設置対処箇所が民地だったりしてそもそもダメなんてこともあります。やみくもに無線LANをというのではなく、費用対効果や期間を考え、最近普及している携帯の定額データ通信を利用することも検討すべきです。この場合は、携帯電話の電波さえ届けば距離や間の障害物はまったく関係ないのがメリットですが、ランニングコスト(月々の接続料)がかかるのと、インターネット経由でしかデータを受信できないので、それなりの環境づくりが必要となることがデメリットです。また」データ交換の頻度が少なければUSBメモリやネットブックのような小型パソコンを持ち運びするという選択肢もあります。それらを踏まえると、施工現場での利用は、
・比較的現場と事務所が近いか、間に障害物がない
・現場で打ち込みたいデータがある。
・そのデータを事務所ですぐに見たい
場合に限られます。一度構築できると大変便利なのはわかっているのですが、構築がなかなか難しいのが現実です。
どちらの場合にしても、無線LAN構築は以前に比べてずいぶん楽になりました。普通の無線LANアクセスポイントなら1万円もしませんし、最近のノートパソコンであれば、無線LAN機能が内蔵されていることが多いです。また、プリンターもネットワーク機能が標準でついているものもあるので、アクセスポイントに有線でつないでおけば共有も簡単にできます。現場での配線は意外と手間が掛かったり、断線の心配もあります。会社全体で取り組めば、アクセスポイントも使いまわせし、セキュリティ設定も一元的に管理できますので、有線に比べると設置手間、管理手間も少なくなると思います。ぜひ、お試しください。