前回、IT計画には以下の3つがあることをお話しました。
1.ITシステム計画
2.ITインフラ計画
3.IT教育計画
今回はこの中のITシステム計画の策定についてです。
ITシステム計画とは、市販ソフトウェアも含めた企業内でつかうアプリケーションソフト及びシステムに関する計画です。実際には、市販ソフトの購入計画と自社開発のシステム運用計画に分かれることになります。
基本的なポイントは、前回お話したように
・経営理念や経営戦略
・会社の成熟度
・ライフサイクル
・臨機応変な対応
を意識した計画の立案です。もちろん、他の2つの計画との整合性が取れていなければいけません。システムを導入するには、それが利用できるインフラが整っていることが必須ですし、確固とした教育体制を構築しなければ宝の持ち腐れだからです。
この計画の最大のポイントは、市販ソフトと自社開発ソフトのバランスです。このバランスを見誤ると、使えないソフトのメンテナンスに多くの費用を払ったり、自社の強みを生かせなかったりします。私のおすすめは、市販ソフトの利用を基本として計画を立案し、市販ソフトがなかったり、自社の強みとしてオリジナリティを出したい箇所にだけ、自社開発ソフトを導入するという方法です。
OA化が進んでいる会社では、比較的、自社開発ソフトが比較的多いでしょう。しかし、残念ながら、システム計画書やプログラムリストのようなきちんとしたシステム関連書類が整備されていることは少ないようです。そのため、システムの延命にはつぎはぎで対応するなどして、不具合も少なくありません。また、他システムと連動できておらず、転記や追加入力を余儀なくされることが多いようです。システム再構築もままならず、運用でカバーして「何とかなっているからいいか」という会社も少なくないでしょう。自社開発は強みを発揮するには重要ですが、運用管理をしっかりしないと足かせになることを忘れないでください。
専用ソフトはまだまだ少ないですが、それでも以前に比べてずいぶんよくなってきています。最初から自社開発にせず、一度ソフト調査なさることをおすすめします。
市販ソフトを購入するにしても、自社開発を導入するにしても、どういう機能が必要なのか、どんな業務手順が自社にあうのかを明確に定義してください。こ れを行わず評判だけで購入したり、従業員の要望だけで開発をすると、無駄な投資になりがちです。逆に、これらをきちんと定義すれば、ITベンダーからも提 案がしやすくなり、自社にあったシステムを得ることができます。このようなものを、RFIといいます。RFIは業務プロセスの整理にも役立ちます。ここで重要なのは、必要であればシステムに業務プロセスをあわせるような柔軟性をもたせることです。自社の業務プロセスを変更することは容易ではありませんが、市販ソフトが提案する業務プロセスには、それなりの経緯や意味があります。その点をふまえ、自社に取り込めるものは貪欲に取り込む姿勢をもってください。
また、計画の中には、ソフトのバージョンアップと自社開発ソフトのライフサイクル(開発、運用、改善、廃棄)を入れておきましょう。ソフトのバージョンアップは、現状のOSやハードの進化を考慮すると2年程度で1回はあると思います。予算をきちんととるとともに、アプリケーションソフトの寿命は2年ぐらいだという考え方を計画に反映させます。
同様に、自社開発ソフトも、最近の規制緩和に伴う法制度の改正に伴い、一度開発したらずっと使える時代は終わりを告げています。定期的な改良を行うこと、必要であれば期間を設けて新システムを導入するような判断が可能になるような計画にしてください。市販ソフトと違い、自社開発ソフトは作りこむのに時間がかかるものです。よって、2?3年で廃棄ということにはなりませんが、5年以上使っている自社開発ソフトは見直し時期に来ていると解釈し、機能のたな卸しと市販ソフトとの比較や、運用コスト等の算出を行う評価日を設定することをお勧めします。
「そんな長期計画を立てない」という方は、1年に一度、同機能の市販ソフト動向調査等を行い、世間の動向をつかんでおくことをおすすめします。
システム計画は無形のものでしかも予算を多く取るため、他の計画に比べて一番軽視されがちですが、業務に一番密接な計画です。この計画をきちんとたて、管理できるかがIT化の重要な指標となると思います。