最近の建設業に思うこと

 通算200回記念というわけでもありませんが、最近の建設業での支援を通じて感じていることをお話します。

問題1:管理(コントロール&マネージメント)不在

 特に感じるのが、管理不在です。建設業法の改正により、管理体制の強化は進んでいるように見えますが、建設現場での雰囲気は決していい楽観できる状況ではありません。

低価格入札によるコスト削減の一環として、元請職員が減少し、下請においても職長兼作業員といったプレイングマネージャーが急増しています。その結果、連絡ミスや管理不足がひどくなってきています。
 さらに、ISOやOHSMSのような書類乱発基準により、書類作成に時間をとられて現場滞在時間はますます減っています。ISOやOHSMSが悪いわけではなく、既存書類を修正したくないために、本来見直すべき書類を見直さずにISO必要書類のみ追加しているからです。認定取得を優先し、ISO本来の体系だった業務策定を無視した結果といえます。人数の減少により、技術伝承は確実に減り、従来では想像もつかなかった簡易なミスや事故が増えています。本来、管理強化のために導入したISOや改正が、逆に管理不足を助長しているように
思われます。

問題2:発注者の技術力、管理力不足

 これは、お金を出す側という意味での発注者です。公共工事であれば公共団体だけではなく、下請けに仕事を依頼する元請も含まれます。施工方法や設計内容の改善、いわゆるVE提案も評価できない発注者が非常に多いです。「仕様書にないから」とか「前例がないから」などと、新 しい技術を根本的に否定する意見しかでてきません。そもそも理解しようという意識が欠落しているのです。また、新技術に限らず専門性の高い技術に対して も、専門業者任せにする傾向があります。前述の人手不足と重なって、この傾向はますます顕著になっており、専門業者から技術を学んだり、管理ポイントを抑えるたりが出来ない状態になっています。
 さらに問題なのは、管理能力の欠如に対する自覚が無く、専門知識を有する相手に論理的でない主張をしてくる発注側です。主張するからには、技術力・管理力をもつべきでしょう。技術力・管理力がないのであれば、主張するだけではなく話を聞く、対応を考える術を身に着けるべきです。

問題3:年末、年度末とその他の時期の格差拡大

 これは統計をとっているわけではないのですが、公共工事における低価格落札で予算があまり、本来なら返納すべきところを、年末・年度末にあまり有用でな い工事を乱発している印象をうけます。(予算返納による次年度予算の削減を心配してのことでしょう。)結果として、一定雇用をしたい企業は経営が危ぶま れ、季節雇用が増えています。結果、ますます技術伝承もできなくなり、品質確保も難しく、若者の定着率は下がる一方です。季節変動を少しでも減らせるよう な努力はなぜできないのでしょうか?

問題に対する一提案

 上記の問題には、解決策がないわけではありません。
 書類業務の軽減であれば、ISOやOHSMSを見直し、不要な書類を削減するとともに、簡易な入力ができるような仕組みづくり(雛形の準備やIT導入)を行う。また、現場がやるべき作業の負荷を軽減する仕組み(事務センター等)づくりを考えることす。
 業務量を変更せず人員削減だけ行うようでは、経営者とはいえません。

 発注者の管理能力、技術力強化として、CM(コンストラクションマネージメント)スタイルの採用があります。日本でも始まってはいますが、海外のようにゼネコンからCM専門会社に転換するようなことはまだありません。海外であれば、当たり前のように使われているプロジェクト管理ソフトも、日本での普及率は著しく低いようです。この点、日本の建設業はかなり成熟度の低い状態にあると思います。
 逆に言えば、ここにひとつの建設業の突破口があるのではないでしょうか。少し個人レベルでもう一つ付け加えると、相手の立場で物事を考えることと、自分の役割のひとつ上の視点で物事を見ることの大切さです。発注者の立場だったら、近隣住民の立場だったら、専門業者の立場だったら、上司の立場だったらと少し視点を変えてみる。これが、管理能力向上やスキルアップを行ううえで必要不可欠なのです。

 最後の問題は、日本の予算制度自体、言い換えれば行政自身が変わらなければ無理かもしれません。しかし、これだけ少子高齢化が叫ばれ、日本の人口も減少している中で、現行制度を維持するメリットは思いつきません。真剣に複数年度予算を容易に導入できる仕組みづくりを検討すべきでしょう。もちろん、予算に対するチェック機能も必要ですが、これらの経理(実際は経営)能力の向上も不可欠です。中途採用や民間力の導入を、より積極的に行っていく必要が
あります。

 私は、日本の建設業の未来は決して暗いものだけではないと考えています。いち早く維持管理時代に突入した結果、効率のよい建設物の運営や構築のノウハウを、世界に先駆け会得できるはずです。そのためにも、従来型の仕組みではなく抜本的に見直した新しい建設業の姿を模索し、もっと積極的に実践していただきたいと思います。
 このままですと、海外資本が日本に流入し、日本建設業の未来はなくなっていくのではないでしょうか。そんなことにならないよう、微力ながら新しい建設業づくりのお手伝いをしていきたく所存です。