情報共有を成功させるには

 前回、「情報共有の失敗する理由」として下記の5つを挙げました。
 
 1.情報共有が会社風土になじまない。
 2.利用しやすい環境になっていない
 3.情報共有で解決すべき問題点が見えていない
 4.発信側を作り出す仕組みがない
 5.コミュニケーション環境ができていない。

 今回から、何回かに分けて、情報共有を成功に導くためのポイントを紹介します。

1.会社の雰囲気作り・経営方針を見直す

 情報共有がうまくいっていない企業では、「会社がひとつになれない」「一体感を感じない」とよく言われます。規模はそれほど大きくないのに、隣の部署が何をやっているのかよく分からなかったり、会社内であまり会話が交わされていないという企業に伺うと、決まって上記の台詞が出てきます。

 その原因は、いくつか考えられます。成果主義や部門間競争の行き過ぎで協力しにくい環境であったり、企業成長に伴って中途採用者が増えた結果、多国籍企業のように企業文化がはぐくみにくい状況になっていることがあります。このような状況下で情報共有を進めるには、情報共有の基盤作りが必要です。そのポイントは、情報共有ができる雰囲気づくり・情報共有を業務の中に根付かせるということです。

 まず、雰囲気作りです。全社的な取り組みの必要性はもちろんのこと、業務外での仕組みづくりが重要です。例えば、中途採用が多く社歴が少ない人間が多い企業では、レクリエーションやイベントなどで「一体感の育成」を行うことが大切です。まずお互いを知ることから始めましょう。挨拶運動や部署をまたいだ地域別・年齢別での懇親会、交流会などが有効です。それ以外にも、社内回覧などで新人や中途採用者の紹介を行ったり、誕生月、出身地特集など他部署の人と会話するきっかけをつくるのも大切です。ただし、最近は個人情報に厳しいので、適切な管理や表現を考慮する必要はありますね。

 運動会や社内旅行などは、最近予算の関係で減少傾向ですが、実は「一体感」に大きく寄与していました。同様に、社内食堂も雰囲気作りに貢献できます。一部の企業では、一体感創出のため、これらのイベントや施設を復活させています。つまり、主軸(=営業戦略や情報戦略)でない部分が、情報共有にとって重要なのです。福利厚生を削れば、コスト削減にはなりますが、情報供給の基盤形成にも影響を与えていることを忘れてはいけません。必要ならば復活させることもいとわないようにしてください。

 次に、情報共有が業務の中に根付くにはどうすればいいか考えてみましょう。業務方針の最上流=経営方針の時点から考えることが大切です。成果主義や部門間競争といえども、そもそも会社全体の成長のため導入されたはずです。それが弊害となって情報共有が行われないのであれば、逆に成長は妨げられ、本末転倒といえるでしょう。

 例えば、営業部門が売上をあげたいがために利益を度外視して受注し、工事部門にしわ寄せがいくなどはよく聞きます。売上至上主義で方針が固まっていればよいのですが、通常は目標利益があって、工事部門のコスト情報を把握した上で、確保すべき利益を踏まえて受注すべきです。ところが、部門間競争でこれが阻害され、結局売上上げても赤字で会社は大損害となってしまいます。

 このような事態を避けるには、経営方針の段階から安値受注はしないと明言し、経営戦略や中期経営計画の中で、限界利益確保のための情報共有を定義することです。情報共有が重要だといいながら、経営方針までさかのぼって見直しをかけている企業は少ないように見受けられます。「あちらがたてばこちらがたたず」にならむよう、経営方針という最上流の指針で、自社で何が一番重要なのかを決めておくのです。

 雰囲気作りと経営方針から浸透させることで、情報共有基盤が熟成され、準備が整ってきます。この基盤なしで、応急処置的にソフトやシステムを入れても、有効活用はできません。

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