情報共有を成功させるには(その4)

 前回、自社のIT成熟度(ITをどの程度利活用できているか)によって、共有方法の仕組みづくりや導入ステップに違いが出るという説明をしました。自社のIT成熟度をきちんと判断するのは難しいですが、目安を設けることで導入時の混乱を最小限にすることはできると思います。今回は、情報共有の基になる、自社情報と共有の意味についてお話したいと思います。

4.自社情報の棚卸しと共有メリットを考える

 まず、自社情報の棚卸しができているかを確認しましょう。当たり前のことですが、月末にのみしか納品伝票の数量を集計していないのであれば、週単位や日単位の情報はないのです。にもかかわらず、ITベンダーの広告に踊らされ、伝票数量を用いてリアルタイムで納品状況をすぐ把握したいという経営者の方もおありです。

 情報は、その取得タイミングや集計単位で似て非なるものなのです。例えば、先ほどの納品伝票を例に説明しますと、日々の納品伝票を仮に毎日記録してもその合計がそのまま週の実合計にはなりません。なぜなら、返品や納品ミス、記入ミスなどの修正を施さねばならないからです。さらに月単位になると、棚卸しとの整合性による紛失数量なども加味する必要があるでしょう。伝票の数量といっても、そういう修正業務によって変わってくるのです。そこを理解していないと、日々業務でやれば月末業務はないなどといった勘違いが生じます。

 少し脱線しましたが、現状で管理している(もしくは入力している)情報を、きちんと整理しておくことが大切です。ついでに、関連業務と担当者(もしくは関わっている人)を明確にすると、業務改善にも生かせます。また、自社情報の棚卸しをすることで、重複情報(同じことを別部門で入力している情報)や集計可能情報
(既に入力されている情報の組合せで作り出せるのに、わざわざ入力している情報)などの無駄を発見出来ます。

 ここで気をつけていただきたいのは、全部の自社情報を整理しなくてはとつい大風呂敷を広げた結果、結局どれも未完成の棚卸しになってしまうことです。無理せず、範囲を限定して少しずつ始めることをお勧めします。そして、少しずつ足元を固めてから、マスター情報(情報の基本となるもの)を決めていくと、ムラなく自社情報を整理できます。

 次に、情報共有の意味、別の言い方をすると共有することで何のメリットがあるかの確認です。「時代が情報共有を求めている」などと、どこかのキャッチコピーみたいなものではなく、そもそも情報共有で解決すべき問題点が何かを把握するのです。さらに、その情報の精度とタイミングをどのようにすべきなのかも決めておきます。

 例えば、解決したい問題が、作りすぎ防止のための生産量調整ならば、在庫数量の把握が基本となります。日々の出荷数量を把握し、既存在庫から引き算すれば現在庫数量がわかります。この際、返品や紛失、手配ミスなどを考慮するほどの精度が必要なのか、タイミングとして毎日ほしいのか週でいいのか等を確認します。おおよその数量でよいのならば、出荷数量だけ把握すればいいでしょう。ならば、毎日の情報管理はさほど難しくありません。 

 いっぽう、返品なども把握する必要があるような精度を要求するとなると、即日返却でもない限り日々管理はできません。つまり、タイミングとして週、もしくは月で考えていく必要があります。ポイントは、生産量の調整に返品把握までの精度が必要かどうかです。作りすぎを防止するための精度が一日の返品量に比べてずっと大きいのであれば、返品数量を手間かけて毎日集計する意味はありません。出荷数量だけ押さえればよいのです。それを、無理して精度をあげようとすると業務に支障をきたし、管理のために余計なコストがかかってしまいます。出荷数量を日々押さえることはメリットがあるが、返品数量は手間の割りにメリットがないと判断されれば、共有すべき情報は出荷数量のみとなります。

 このようにして、共有すべき情報の意味をきちんと考えましょう。そうすれば、無駄・無理なく情報共有ができるはずです。逆にこれをしなければ、すぐに破綻する情報共有になってしまうのです。

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