情報共有を成功させるには(その3)

 今回は、一歩踏み込んで、より効果的に情報共有を成功させるための環境づくりの話をします。

3.IT成熟度を把握し、レベルにあったIT環境を構築する

 IT成熟度というのをご存知ですか?以前、「IT活用の進め方(その4)」で4つの成熟度と段階(レベル)について紹介しました。その4つの成熟度とは、

 ・IT活用力・・・個人レベルから企業間レベルまで情報の利活用の範囲の広さ

 ・IT人財力・・・一部の管理者のみに頼っているレベルから、組織的に人材をつかうレベルまでの社員力

   ・IT企業文化力・・・IT活用に欠かせない業務手順の明文化や最適化のレベル

 ・ITインフラ力・・・単体パソコンから、社内外を統合したネットワークまでのインフラ整備段階
 
です。そして、自社がどの段階にあるのかを把握するために使うのが、成熟度です。目標を高く掲げるのは悪いことではありませんが、成熟度という階段は一歩ずつしかあがれません。つまり、高い目標をかかげるほど上るべき階段は多くなるということです。自社の現状を把握せず、広告や営業トークに踊らされて、無理なシステム導入をしている例がとても多いものです。まずは、自社のレベルをきちんと把握することが大切です。 

  自社レベルが把握できれば、次に自社レベルに合ったIT環境を考えましょう。例えば、自社が電卓と紙で伝票集計を行っているのなら、まずは、電卓を表計算ソフトに変えてみるという段階を踏みます。いきなりパッケージソフトを導入するのは、危険です。機能を使いこなせず、宝の持ち腐れになるのが目に見えています。段階を踏んで環境を整える。それが成熟度を考慮するということです。

 さて、表計算ソフトを使うためには、パソコンを導入するのですが、これも一気にやらずに一人から順次広げていくようにします。そして、現場の要望に応じて増やすものではありません。いつまでにどれだけの台数を導入する、ある台数になったらネットワーク環境を構築する、ある台数になったら管理者をおくといったように、総合的な計画を立てた上で行います。環境整備とは、ハードを整備するだけは不十分であり、ソフトを入れたらあとはお任せというのでもありません。IT教育や管理者育成、IT化に伴う権限委譲など、人や制度面も整備の中に組み込んでいくのです。これがIT環境整備です。

 そもそも、紙ベースでしか帳票をやりとりしていなかったところに、表計算を入れるだけでも、当事者にとっては一大事です。パソコンの電源を入れ、マウス・キーボードを操作しディスプレイとにらめっこです。数式が事前に入っていて数字を打ち込むだけならまだしも、自ら集計や並び替えを行う必要があるのならば、操作の習得も必要です。広告のうたい文句のように、「表計算でらくらく集計」というのは慣れた後のことであって、最初からではありません

 残念ながら、経営陣は、表計算ソフト導入の決断だけで終わり、ここからは実務だからとおまかせとばかり放置するので、実務とのギャップを招いてしまいます。当然、思ったような効果はあがりません。操作を把握する必要はありませんが、どのような習得が必要でどの程度の時間や費用が必要なのかを、きちんと押さえておく必要があります。そうでなくては、先ほどお話した総合的なIT環境整備計画を作成することはできないからです。

 このIT環境整備計画はもちろん、経営戦略と密接に関係しますし、業務改善とも結びつきます。ITはITと分けている限りでは成功することはないでしょう。


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