情報共有を成功させるには(その2)

 前回、「会社の雰囲気作りと経営方針の見直し」を行い、情報共有の基盤づくりを目指す話をしました。物理面ではなく精神面での整備が大切です。

 さて、基盤がある程度出来たら、次は、利用しやすい環境を創り出すことです。

2.業務の中に情報共有を取り込む

 情報共有そのものを、単独の業務にするのは望ましくありません。とりわけ、既存業務はそのままで、情報共有のために新たな業務を追加すれば、負担増となるだけです。できるだけ既存業務に影響を与えないよう、考慮すべきです。

 そこで、まず既存業務の中で得られる情報の整理、つまり、どのようなものがあるか、また、情報共有したい情報との比較からはじめます。この業務情報の棚卸しをしないまま、作業だけを追加すると、二度手間になってしまいます。既存業務の中にどれほどの情報があるのかは、連動した統合システムを導入しているのであれば比較的簡単に出てきますが、手作業の場合は大変です。しかし、この情報整理なしには情報共有は成功しません。

 この業務情報の棚卸しにおいて、特に注意すべきことは、複数部署をまたぐような業務用語です。たとえば、工事番号と受注番号、発注者と得意先など、同じ意味であっても違う用語を用いている例が多くあります。また、情報の親子関係なども整理されていないことがあります。こういった状態をふせぐためには、業務情報を情報入力の入口から情報出力の出口まできちんとならべ、部署をまたぐ際には、無意味な用語変換が行われていないかどうか確認することが大切です。 

 具体的には、関連帳票の項目をすべて洗い出し一覧表にして、帳票と項目の関連がわかるようにします。また、入力者を明示すると、情報の発生源が一目一目瞭然となり、二重入力のチェックにもなります。また、複数の部署で関連情報をつなぎ合わせれば、必要情報の漏れが少なくなり、一部署でその都度新たに入力をしなくてもいいと分かる場合もあります。

 このためには、業務フローを整備し、業務用語の中でキーとなる業務用語(複数部署をまたがる用語)を統一することが必要です。業務改善を進めるためのポイントとして、同様の話をしましたが、情報共有のためにも有効な手段なのです。

 次に、残念ながら、情報共有したい情報が既存業務の中に無かった場合についてです。その場合は、情報記入の作業を追加する必要があります。しかし、その際においても、新たな帳票を起こすのではなく、関連帳票の変更を行うことで作業負荷を最小限にしましょう。情報共有を安易に新たな業務と捉え、帳票を追加する例は少なくありません。しかし、それが記入者の負担増となり、共有を阻んでいるのです。既存帳票を変更することに抵抗を示す文書管理者も少なくありませんが、それは、業務のための書類がいつの間にか書類を書くための業務にすりかわっているからではないでしょうか。

 そして、ここにおいてもトップダウンの重要性があります。経営戦略レベルから情報共有の重要性を語るだけでなく、時代の流れに応じて必要な情報が変わるのと同様に帳票も変わっていくということを、トップダウンで文書管理者にしっかり自覚してもらいましょう。

 さて、せっかく業務情報を棚卸しするのです。無駄な情報は省きましょう。例えば、現場が新たに出来るときに、総務では現場事務所の住所や電話番号、担当者氏名が必要となり、経理では工事口座が必要となるとします。仮に通常、経理は総務経由でしか現場事務所へ郵送や連絡をしないとするならば、住所や電話番号は経理の帳票には不要ですね。緊急時に必要であるとしても、それは総務に聞けばいいことです。しかし、多くの場合、この緊急時を名目にして、経理の帳票にも住所や電話番号を記入する欄が設けられています。これは部署間の壁が理由であったり、管理部署の安易な都合だったりしますが、全体的な視点から見れば、入力者が入力にかける時間の総和のほうが、経理が総務に聞く時間よりはるかに大きいでしょう。しかし、こういった時間・効率という視点で、業務や帳票を見ることはありません。よって、部署単位の都合で帳票が作成されていることが多いのです。

 情報の有効範囲や有効期限をしっかりとさだめ、項目レベルで一元管理することで、無駄な情報がなくなるとともに負荷は確実に減ります。情報共有を行うためには、業務の中にその内容を取り込むとともに、無駄な情報をはじくことが大切なのです。 

 業務効率を行うためにシステム化する際にも、これらの作業は必要不可欠です。それを忘れて、安易な既存業務のシステム化を行うからこそ、「無駄なシステム」が生み出されてしまうのです。

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