前回までで、情報発信の仕組みまで紹介しました。発信の仕組みは、システム的なものだけでなく、発信者へのインセンティブ(やる気を出させるもの)も組み込むことが重要だと理解していただいたと思います。さて、次はいよいよ利用者に対する仕組みづくりです。
6.利用頻度の見える化と利用したことへの評価基準
発信者がインセンティブ目的で発信を次々にしても、受信者が利用しなければ、意味がありません。つまり、どの情報をどのぐらい利用したかがわかる仕組みが必要です。
「せっかく掲載したのに誰も見てくれてない」という声を聞きますが、よくよく聞いてみると、「見たかどうか、分かる仕組みがない」ことがあります。これは、情報共有を送信者から受信者への一方通行と考えているからです。利用したと送信者がわかることで、受信者と送信者の相互通行が実現される、それが大切なのです。
利用記録に対する仕組みはいろいろありますが、おすすめのものはサンクスメールです。情報ページに登録者のアドレスを入れておき、クリックするとメールソフトが起動して、お礼メールを送るものです。あまり型式ばると送りにくくなるので、上司や見知らぬ人でも定型文章で送るとルール化しておくといいでしょう。
また、上記のメールは、ccで情報共有システムを管理している側にも配信して、利用度頻度を把握できるようにします。その後、定期的に情報掲載画面に利用頻度を表示すれば、情報重要度がわかって利用者の利便性向上につながります。ランキング表示(利用回数順に一覧表で表示する)や重要度表示(星の数で表す)などがわかりやすいでしょう。さらに利用頻度の高い情報は、探して見つけるプル型の情報提供としてだけでなく、回覧やメール配信などあえて関係者に渡す(=プッシュ型)情報提供と連動させることが、情報共有率を高めていくポイントになります。
サンクスメールを活用すれば、会社の人脈作り・部署を超えたつながりを形成するきっかけ作りなどにもなります。「やりすぎると迷惑メールのようになるのでは」「返信に手間が掛かるのは嫌だ」などと危惧する方もいますが、メールタイトルでフォルダに振り分ける・原則返信不要などのルールを作れば、問題ないでしょう。システムに余計な仕組みを入れずにすむので、情報共有が小規模な場合には有効だと思います。
これ以外にも、システム側に感謝ボタンやお役立ちコメントなど、利用したことを残せる仕組みがあると、改善効果の目安となり、発信者のはげみやインセンティブの重み付けに利用できます。コメントに発信者の返信ができるようになると、情報にさらに付加価値がついた意味のある情報になります。
さて、発信者に対するのと同様、利用者への評価の仕組みも必要です。利用することで、「仕事の効率が上がった」「ミスがなくなった」のであれば、会社貢献ができたの同じはず。この点をしっかり評価することなく、「積極的に活用するように」といわれても、発信者同様、モチベーションがあがりません。情報共有そのものが目的ではないのですから、手段である情報共有をチェックするのではなく、その先にある本当の目的、つまり業務改善や業務知識向上をきちんと評価しなければならないのです。この評価は、利用者の声なしには不可能です。だからこそ、利用者を評価する仕組みが必要なのです。
ただし、利用回数がやみくもにあってもそれだけでは、会社貢献度がわかりません。先ほどのサンクスメールならば、「作業時間が○○時間減りました」とか「△△でミスしなくてすみました」などの成果を書くことで評価します。もちろん、システムに利用効果を入力できるような仕組みをつくり、数値的に評価するのが理想ですが、あまりカチカチにしても利用しづらくなってしまいます。
費用対効果が大きいものを評価することも大切ですが、積極的に利用することで、業務知識があがった・ミスが減ったなどというのも、工夫(簡易テストや事故率集計)次第で評価できると思います。