今回も営業管理についてお話しします。今回は目標管理についてお話しします。
1.目標管理
営業の一番の管理対象は何といっても売上目標でしょう。中小建設業では年間の請負金額を設定し、担当者別で漠然と人数割りした金額を売上目標として、日々営業活動をしていることが多いと思います。
しかし、ここで大きな問題があります。どんな高額な請負金額でも利益の出ない工事はダメということです。「そんなの当たり前だよ」と言ってもらえればいいですが、「いや、たくさん金額が増えれば何とかなる」という根拠のない話をする方もゼロではないのが残念です。
売上目標が不要だとは思いませんが、利益目標も設定し、それを踏まえて売上目標であることが必要です。そのためにまず必要なのはどれだけの利益があれば、会社が問題なく運営できるのかを把握する必要があります。しかし、経営が厳しい建設会社でこの金額を即答できる営業マンはほとんどいません。
もちろん、利益は損益分岐点ちょうどのところでは意味がありません。できれば社員の給与を世の中並みに昇給できたり、設備を新調したり、福利厚生を充実させたりするための金額も見込んでおく必要があります。当然、経営者はそれを考慮した年度利益目標を設定し、営業マンはその数字をもとに原価と利益率から逆算して請負金額を算定する必要があります。
この利益率も民間と公共では異なりますし、自社の分野ごとの得手・不得手、新工種・既存工種、規模でも異なります。正確な数字は協力業者に見積をとって出す必要がありますが、営業活動でそこまでの時間はありません。つまり、過去の実績を踏まえて、分野別規模別のある程度決まった標準利益率を設定しておかなくてはならないのです。しかし、これも不振企業ではほとんど設定されていないことが多く、利益率の定義も不明瞭です。
目標管理を行う上で必要な利益と標準利益率の設定が一番最初だということを意識してください。
次に全体の利益額もしくは請負金額が決まったら、単に人数割りではなく、規模別分野別の目標額を立てましょう。リフォームも入るのであれば、新規・既存でも立てる必要があります。リフォームの場合、1回で終わりということがなく、何回かに分けて工事が行われるため、フォローによる工事獲得がとても重要だからです。
ただし、規模別分野別の目標は漠然と立てるのではなく、公共工事なら、国・地方公共団体の予算や傾向把握、民間工事なら過去の動向や消費税等に付随する景気浮揚策等を十分に調べて設定する必要があります。以前お話ししたように消費税は特に移行期間での特例があることやその前後での支援策が豊富に用意されていることからタイミングを逃すと波に乗れないまま、増税後の買い控え影響だけ受けるという最悪の事態が待っています。
ここまで設定できれば、あとは達成するために様々な営業活動を進めて、案件を獲得していくことになります。年度目標を月間目標に変え、個々の目標値に対する進捗状況を週単位、月単位で確認し、未達の場合は全体で対策を考えるといった動きをしてきます。
得意先との営業で留意してほしいこととして、貸し借りの話があります。民間工事で予算的に厳しい、つまり利益が低い工事を受注後、予算に余裕のある、つまり利益が高い工事を受注させてもらういうケースを貸し借りと表現しますが、年度内の貸し借りにとどめ、できればなしになるような営業を行うことを意識してください。
絶対にすべきではないのが年度越しの貸し借りです。企業規模によっては可能かもしれませんが、昨今の経済情勢を見る限り来年を正確に予測できることは相当に難しいです。また、今年の利益を確保できなければ目標達成ができない以上、別のところで補てんする必要があり、決して簡単なことではありません。営業としては辛いことかもしれませんが譲ってはいけない一線だと思います。
利益を考慮した目標管理をすれば、このようなことは減るはずです。売上だけでない管理を実践しましょう。