電子納品の再利用 

 電子納品のまとめとして、会社内での再利用についてお話します。

 今までの4回にわたる説明で、電子納品のおおまかなイメージはつかんでいただけたと思いますが、あまりの書類の多さに閉口した方もおいでかもしれません。これらを発注者への納品物としてのみ捉えるのは、もったいない話です。それでは、これらの電子データをどうすればいいのでしょうか。

  それは他の工事への展開です。具体的には、次の4点が再利用性の高い書類となります。

 ・施工計画書
 ・図面
 ・実施工程表
 ・打合記録

以下、それぞれについて見ていくことにしましょう。

1.施工計画書

 施工計画書は一番再利用しやすいもの。再利用性を高めるために、大事なことは以下の2点です。

 ・各工事での工種を別のシートにまとめておきましょう。全体工事は毎回違っても、工種ごとであれば他の工事に転用できるものが多いはずです。これを利用すると、次回以降の着工準備がずいぶん楽になります。
  
 ・できるだけ同じ書式で施工計画書を作成しましょう。発注者によっては、書式を指定されることもありますが、 多くの場合において大事なのは内容であって、書式は自由だと思います。社内で統一書式を作っておけば、他現場の計画書を利用しやすくなります。

2.図面

 図面も、施工計画書と同様、全体的には違っていても、仮設計画図や部分的な工事(擁壁工や排水工)ごとであれば使える部分が多いと思います。また、クレーン等の重機やコンクリート2次製品も再利用性が高いもの。工事終了後に部品化して、他現場に展開できる仕組みを作っておくとよいでしょう。その際には、挿入しても変な画層が出来ないよう、社内ルールも作っておきましょう。

3.実施工程表

 工程表は計画段階のものではなく、実施後のチェックが入ったものこそが重要です。特に、歩掛りをおさえたい工種や始めて経験した工種では、工程表があとで非常に役立ちます。作業人員や稼動機械等を記録しておくことが重要ですが、そのためには、工事を行う前にこれら今後の展開に必要な工種を現場監督にきちんと明示しておき、資料を取る意味を教えるようにします。
 
 全工種について、やみくもに細かい資料をとろうとするのはおすすめできません。現場の負担になるばかりでなく、資料作りに没頭する結果、現場がおろそかになってしまいます。1現場で1工種か2工種に押さえ、きちんとしたデータ収集を行うことが重要です。

4.打合記録

 意外に思われるかもしれませんが、打合せ記録は、非常に展開し甲斐のある資料です。工事での重要な管理ポイントをまとめているからです。ただし、そのままでは時系列で並んでいるにすぎないので、再利用性は低いでしょう。 たとえば、設計変更の打合せならば、変更の経緯順に集めて一つのまとまりにしておくこと。電子納品ではこのような集め方ができないので、打合記録簿名を表にし、関連のある打ち合わせををまとめておくのです。その際、備考欄には、打合記録に記載できなかった社内情報等を書いておくとよいでしょう。次工事に展開する際、役立つことが多いものです。

 電子納品は、その場限りの記録で終わりがちです。が、きちんと整理すれば、じゅうぶん利用できるものです。会社全体で組織的に行うのが理想ですが、まずは出来そうな現場をモデル現場とし、少しマンパワーをかけて展開できるような見本を作ることから始めましょう。

 最初は年に一つ二つが限度かもしれませんが、ルール作りさえきちんとすれば、ねずみ算的に増えていきます。はじめは利用もしづらいと思いますが、あきらめず継続すれば立派なライブラリーになりますよ。
 ぜひ、あなたの現場からはじめてみませんか