前回に引き続き、電子納品支援を数回行うにあたり、いくつかの問題点にあたりました。その際に行った対策について、お困りの方がいるのではないかと思い、お話をします。
今回は電子納品と支援ソフトです。
まずは背景として、現在の電子納品の状況について少しお話しします。
2001年に始まったCALS/EC 地方展開アクションプログラム(全国版)は目標年度の2010年度を1年過ぎた現在でもまだ未達成の状態です。都道府県、政令指定都市レベルでは、導入できているものの中核市(人口30万人以上)では、まだ試行段階のところもあり、それ以下の人口の市町村ではまだまだといった感があります。
また、導入内容もばらつきがあります。特に運用や将来計画に一番役に立つはずの図面類については、画層こそ国土交通省に準拠していることが多いものの図面形式はAutoCAD、JW_CADの独自形式やSXFの簡易形式SFCなどバラバラになっているのが実情です。
実際には、チェックシステムさえ通れば、いいとばかりに本来の画層管理や基本線種、線色を無視した電子データもあり、将来の再利用に不安があります。ただし、チェックシステムをいくら強化してもできるチェックには限界があり、難しいところです。誠意をもって正しい画層や線種、線色にしても、経費としても認めてもらえるわけだけではなく、工事評価にもつながらないこともあって関係者も一層の努力というわけにはいかないようです。
NEXCOや県の外郭団体などはさらにオリジナル要素が入っており、全国統一で図面を活用できるといったCALS/ECの本当の目的からは遠い状態になっています。
さらに、未だ(案)が外れないままの国土交通省の電子納品要領はチェックシステムがバージョンが8となり、管理ファイルのDTDもバージョンが5になりました。そのため、地方では3、ある団体では4、国交省は5と複数のバージョンが入り乱れている状態になっています。
つまり、支援ソフトが国交省のみの場合、納品先が外郭団体や地方公共団体だとすると管理ファイルのバージョンアップだけでなく、バージョンダウンにも対応する必要が出てくるのです。特に専用ソフトの必要なボーリングデータや測量データなどはバージョンによって書式が異なることもあり、作成に苦労しています。
そこで電子納品を作成する際には電子納品支援ソフトを使うことになります。これは必要な項目を入れるだけで電子納品の形式に従ったデータを出力してくれるソフトです。
しかし、このような状況下で電子納品支援ソフトで、すべての団体、バージョンを対応できるわけではありません。オプションで対応できるもののありますが高価なことが多いため、中小建設会社や専門会社は購入できておらず、国交省のみで、残りはあきらめていることが少なくありません。
専門業者には電子納品の部分的支援をお願いすることがあるのですが、上記の理由できちんとチェックシステムを通せる電子納品データがつくれないことがあります。
大手ゼネコンでも電子納品は現場任せにしていることが多く、現場でうまく対応できていないことも多いようです。
対策として、ひとつは有償の電子納品支援サービスを活用することです。マイクロフィルムや製本を行っている企業が支援ソフトを購入して行っている場合やスキャナーで紙書類を電子化するサービスを行っている企業が管理ファイルを作成する等のオプションを提供する場合など、いろいろな企業がサービスを提供しています。金額に開きがあり、サービスレベルにも差があるなどまだまだな部分もありますが、部分的な利用からはじめてみるとサービス内容もわかっていいと思います。
もうひとつは、エクセルのマクロを使って、簡易な作成ソフトをつくることです。こちらは少し勉強が必要ですが、電子納品用の管理ファイルはあまり難しい書式ではないので、基本的なルールさえわかれば、さほど難しいものではありません。できている管理ファイルの一部を書き換えるだけであれば、マクロでなくても、エディターソフトの置換機能を活用すると簡単にできるものもあります。いずれにしても、管理ファイルや一部の納品データはテキストベースで作られているのでファイルをあけてみてのぞいてみることをおすすめします。まずは国交省のサンプルファイルからのぞいてみてみるといいでしょう。
できれば、全国全団体統一の仕組みで納品できるようになることを願いたいですが、いましばらくはこのような応急処置も含めて、納品側でがんばるしかないようです。