電子商取引(電子調達)の現状と課題

 今回は建設業における電子商取引の話をします。2005年に電子調達として概要をお話ししてからもう7年もたちました。

 あれから7年たちましたが、ネットショップ等のBtoCでの電子商取引の普及に比べるとまだ普及定着したとは言い難い状態だと感じます。実際に建設業界で電子商取引サービスの大手であるCI-NETでも7年前の7千社から今は1万社弱になりましたが伸び悩んでいる状況です。建設会社全体の数から行くととても少ないです。

 改めて、建設業での電子商取引を説明すると、見積依頼から始まって、見積回答、注文書、注文請書、出来高報告、出来高承認、請求、支払に至るまでの一連の流れを電子データのやりとりで行うことで、紙が不要になるものです。もちろん、上記の流れの一部だけを行っているケースもあります。

 ほとんどの場合は、専用の契約・決済システムをもつサービスを提供している業者と提携し、自社システムを連動させて使用しています。

 導入の一番のメリットはやはり注文請書・契約書の印紙不要です。電子商取引では印紙は不要とされているため、取引回数の多い企業は印紙代削減だけで大きな効果が出ているようです。特に一つの工事で、一つの企業に対しても工事進捗や内容の関係上、複数の注文を出す場合、そのたびごとに注文請書に印紙を貼るので、印紙代はかなりの金額です。このような契約を多くもつ企業はメリットを感じているようです。

 しかし、逆に言うと少額で請負契約を行っている企業には印紙代のメリットは少なく、導入へのハードル(システム導入や操作方法習得)というデメリットが大きいようです。結果として普及は大手・中堅とその関連企業にとどまっている感じを受けます。

 また、まだまだ手書きベースでの取引を行っている企業では電子化そのものが大きなハードルとして待ち構えています。さらに出来高に関しては現場単位での原価管理が重要なポイントとなりますが、このあたりも中小企業には難しい課題のようです。

 つまり、電子商取引を実現するためには、企業内での原価管理や収益管理の仕組みをきちんと作ったうえで、ある程度、電子化して手書き文化が減らしていくめどが立たないといけないということです。実際の導入事例でも業務改善は必須なのようで、苦労話が多く書かれています。

 原価管理や収益管理の仕組みづくりは業務手順だけではなく、社員の意識改革も不可欠です。原価管理システムそのものは市販で多く出回っていますが、入力ミスや入力遅れなどシステムがうまくいかない理由の大半は人的なものだと思います。

 電子商取引の普及が電子納品に比べて難しいのは、この仕組みづくりの困難さにあると思います。とはいえ、収益管理は企業継続のためには一番重要な業務であることはいうまでもありません。しかし、なかなか手を付けられていないのが現状のようです。

 もちろん、発注者側のシステム導入に対して、電子商取引を応急処置的に対応することは可能です。しかし、それではせっかくのメリットを享受できないままで手間ばかり増えてしまうことになります。急がば回れで、原価への意識改革や関係業務の改善、社内帳票の電子化等をしっかり行うことが電子商取引のメリットを最大限享受するポイントだと思います。

 普及には、公共団体の積極的な参画も必要だと思いますし、施工業者だけでなく材料業者や建設関連商社との電子商取引も大切です。課題はいろいろありますが、電子商取引はこれからも増えていくことで、建設業界の金銭取引が明瞭となり、一般の方の悪しき認知を減らしていくのではないかと期待しています。

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