前回に続いて、建設業での電子商取引についてお話しします。今回は資材調達業務です。
前回お話ししたようなきちんとしたシステムでなくても簡易な電子商取引は可能です。簡単に言えば、見積依頼の内容をエクセル等で入力したのち、電子メールで関連業者に送付してもらい、見積内容を確認の上、単価を入力、再送付してもらうという方法です。この流れでのポイントをお話ししていきます。
(1) 電子メールでのやりとり
見積書式を統一したうえで、やりとりするということは相見積も行いやすいですし、その比較も容易になります(隣の列にコピペするだけで比較可能)。また、担当者単位でメールが配布されている
場合は応答も比較的早いです。FAXの場合はどうしても企業にひとつのため、メールに比べると反応がワンテンポ遅れることがあります。ただし、小規模材料業者等ではFAXのほうが望ましいこともあるようですが、依頼書の文字が読み取れない、間違った数量の読み取りで見積金額がおかしいなどのトラブルが発生することなどのデメリットを説明し、できるだけ電子メールでのやりとりを依頼するようにしています。
(2) 現場調達から集中購買への活用
よく行う調達項目(鉄筋、コンクリート二次製品、仮設用品等)はあらかじめ全社統一の書式を作ったうえで、現場に数量を書き込んでもらい、直接担当者同士でやりとりせずに本社で一括購買を行ったほうが単価交渉が行いやすいことがあります。
特に同時期に予算の厳しい小規模現場と予算に余裕のある大規模現場が同じ材料を依頼する場合は、両方を合わせて交渉することでスケールメリットによる値下げを期待することができます。もちろん、そのためには月単位で次月の発注予測ができる必要があり、工事担当者の精度の高い工程表作成や発注時期の設定などができている必要があります。
(3) 見積基礎資料としての活用
電子データとして見積結果が蓄積されたならば、過去データとして活用でき、次回の見積の際に基礎資料として活用できます。また、複数の現場での単価調整も行いやすくなると思います。
これを容易にするためには上記の書式統一はもちろん、確定した調達内容を一元的に管理する仕組みを作ることです。具体的には共有フォルダに規模別や地域別、年度別、対象工種などの特定のルールで区分けしたフォルダを作成し、その中にファイルを保存します。ただし、ファイルを保存しただけではその調達内容の背景がわかりませんので別途、調達メモのような形で背景(例えば、複数現場の一括購買による値下げ等)を記録することで条件を確認できるようにしておきます。また、工事記録とも連動させることで同規模工事での見積を拾い出しやすいようにすることも活用向上に貢献すると思います。
(4) 副資材の見積
主要資材は上記のような取組ができても、少ない量や特殊な資材はなかなか集中購買というわけにはいきません。しかし、これらも電子データでやりとりできるようにすることで、現場の負担を軽減するとともに記録化が容易になります。
この際に重要になるのが、実行予算書の電子化です。工種レベルではなく、部材レベルまで電子化していると見積の依頼も容易になります。しかし、実際は工種レベルも微妙で、実行予算書がない企業も少なくありません。そのためにできるだけ、年度単位でテーマを決めて、少しずつ元になるひな形をつくっていくことをおすすめします。時間はかかりますが、確実に実行予算の電子化に貢献すると思います。
(5) 発注者への元積資料
また、この実行予算の電子化はそのまま発注者への元積書の詳細項目として活用できます。これに(3) での資料を合わせることで、競争力があり、収益の出る入札価格を設定することができます。
多くの場合、電子商取引はそのやりとりだけに注視しがちですがそのデータの活用や準備のための業務改善こそが重要だと思います。