前回に続いて、建設業での電子商取引についてお話しします。今回は出来高査定業務です。
前回同様きちんとしたシステムでなくても簡易な電子商取引は可能です。ベースになるITは今回もエクセルと電子メールです。
(1) 出来形査定
まずは出来高査定のうち大半を占める取極契約での基本情報である出来形査定です。出来高と出来形がピンとこない方もいると思うので解説すると、出来高は現場で消化した金額で、出来形は現場でできた構造物の形のことを意味します。つまり、支払いを構造物の数量とリンクさせている取極契約は出来形の査定なしには支払いができないのです。
構造物が完成単位で支払うのであれば、難しくないのですが、構造物の規模によっては、部位単位で支払う必要が出てきます。この時に部位単位の数量を事前に数量計算書等から抜きだして一覧表にしておくと査定がスムーズにいきます。特に鉄筋などは主筋だけでなく、配力筋なども部位できちんと分けることで実際の出来形に近い数量を算出できます。部位をこまめに分け、エクセル等に入力しておけば、集計等がとても楽にできます。
(2) 材料査定
コンクリートのような材料支払いは設計数量での部位計算ではだめで打設ロスを含めた実数量を支払うことになります。その際に数量だけで支払うと大きな工事の場合、どの構造物分を支払ったのか不明瞭になるため必ず、設計数量との対比をしておくことが重要です。上記での出来形査定の準備で用意した数量計算書とコンクリート打設時の実績を電子化しておくと速やかに作業ができます。先週「現場でのタブレット端末活用」でお話ししたような仕組みができると作業中に記録をとることができるので負担も少ないと思います。
また、鉄筋のように加工ロスがあるものは加工図からきちんと数量をまとめておくとともに、段取り筋などの数量も考慮できるような表を作成しておくことが大事です。
いずれにしても材料は当初の発注書どおりではないことを十分に理解し、施工内容に応じた数量を把握しましょう。
(3) 労務査定
基本は作業日報です。日報を電子化することで月報はエクセルの機能で比較的楽に算出することができます。大手企業では現場入退出や打合せ時の出面(作業人数)確認の電子化で作業日報を比較的簡単に作成できますが、普通は難しいですよね。ひと手間かけて終業時に今日の作業人数をエクセルなどに記入できるような仕組みをつくっておくことをおすすめします。
もちろん、協力業者さんに事前にエクセルで帳票を作成したものを渡しておいて、記入してもらうのも一手ですが、チェックをする仕組みは入れましょう。作業がスムーズに進んでいるときは問題ないのですが、ちょっとした追加工事や予定が遅れていて増員しているときなど理由を毎日メモしておかないと査定時にトラブルの元になります。円滑な支払いのためにも作業日報のチェックはきちんとしましょう。
(4) 契約数量の電子化とメールでのやりとり
出来形、材料、労務等基本資料をきちんと電子化しておけば、あとは契約数量の電子化ですべてがつながってきます。契約数量の出来高は、あくまで協力業者が入力したものを発注者側が査定するのですから、契約数量を月別に入力して合算がでるような電子帳票をエクセルで作成したのち、協力業者さんに渡しましょう。請求書提出前に数量を入れてメールしてもらって査定すればOKです。
(5) 協力業者の月次決算
上記の電子資料は協力業者内での月次決算の資料にもなります。工事別原価管理がうまくできないと相談されてきた協力業者さんにはこの資料から月次決算を行うためのポイントを説明し、部分的ではありますが、原価管理をはじめることができたようです。
詳しい話はまた別の機会にしますが、電子化は元請だけではなく、関係するすべての企業にメリットがあることを理解してもらい協力体制を築くよう心掛けてください。