前回までは作業手順書の作成ポイントについてお話ししました。今回は作業手順書の作成の進め方についてお話しします。
まず、社内の作業を洗い出すことからスタートします。ただし、社内作業をすべてを洗い出してから作業手順書を作成するのは手間がかかりますし、大変です。
そこで、作業対象の内容をもとに優先順位を決めて、作成することをおすすめします。優先順位のキーとなるのは会社への影響度です。その作業のQ(品質)C(費用)D(工期)S(安全)が会社に与える影響度の大きい順に手順書を作成するということです。具体的には次のような順番で作成をしていきます。
(1) 危険度の高い作業
まずは、S(安全)への影響度が高い作業を対象にします。事故が起きたら品質や費用はもちろんのこと、会社への信頼度が一番揺らぐことになります。死亡事故などが起きてしまった場合、指名停止などの経営問題に直結するような影響を及ぼします。
では、具体的にどのような作業を選ぶのでしょうか。ひとつは一般的に労働災害の起きている原因になりそうな手順が含まれている作業です。建設業労働災害防止協会(略称:建災防)などで事故原因別の資料を見ることで事故が多い作業を確認することができます。
もちろん、墜落(高所作業)、飛来落下(上下作業)、はさまれ(重機作業)、転倒(運搬作業)、切れ(工具作業)という5大災害はいろいろな作業に含まれているので、いたるところに危険があり、気になりだしたらキリがないといわれそうです。それでも、対象となる作業は地道に手順書を策定していくことが大切です。
もう一つは、社員へのヒヤリングでヒヤリハットがあったものを作成するという方法です。不幸にも事故を起こしてしまった作業があれば真っ先につくるべきですが、そうでなくてもヒヤリハットは事故の前兆です。ただし、定期的に社員に調査することで意識させないとなかなか出てこないことを忘れないでください。
もう一つは、安全パトロール等で第3者の目線で危険を感じる作業です。この際に若手や未経験者をつれていくとより危険を発見しやすいことがあります。(誰でも初めての時は緊張しますからね。)
(2) 作業効率の悪い作業
次はD(工期)への影響度が高い作業を対象にします。といっても工期の命運を握る重要作業というものではなく、作業効率が悪くて、手間暇がかかっている作業です。小さな作業が多いのですが、「チリも積もれば山となる」でこのような作業がのちのち工期やコストに響いてきます。
作業効率が悪い作業といわれてもピンとこないと思いますが、ひとつの目安としては、段取り(準備)に時間がかかるものや待ち時間や移動時間などが多く、作業がすすみにくいものを選んでください。
まずは効率の悪い原因となる手順を洗い出したうえで、どうすればその手順をなくせるかを考えるといいと思います。
例えば、段取りは内段取りとよばれる作業を止めてしまう準備を外段取りと呼ばれる作業に影響を及ぼさない準備に変えてしまうことを考えます。具体的には測量や材料運搬を本作業と並行してできるようにすることで作業効率をあげることです。
作業から少しはずれますが、ある建設会社で測量業務だけを専門でやる社員を育成することで、通常の社員の倍以上の速度で測量準備を行えるようになり、その社員を複数の現場で効率よく利用することで作業効率をあげている事例がありました。これは作業の中にある測量を全部外段取りにした例です。
上記の例のように独立させなくても作業の中での役割分担を明確にすることで作業効率をあげることもできます。測量や材料運搬といった手順を専任でやってもらうとか、ある手順は1人で独立してやるのではなく必ず2人でまとめてやるなど作業内の作業員の動きをひとつずつ見直していくことが大切です。