前回、「見える化」の勘違いと題して、「見える化」の問題点をお話ししました。結局、「見える化」は手段です。何かの目的がなければやることすら意味がありません。今回は、「見える化」が有効な手段となるような目的を、いくつかまとめてみました。
1.属人化の排除
「○○さんがいないとこの業務はできない」「△△くんがいないとこの商品の加工手順がわからない」といった話はよく聞きます。
本来は、まず業務があり、そこに人をつけるべきですが、人を前提にして業務が発生すると、このようなことが起きます。中小企業にかかわらず、日本的な企業においては、この傾向が強いのです。しかし、転職やリストラなどが増え、、定年まで一つの会社にいるという昔の常識が通用しない以上、誰でも(もしくは、準ずる人が)業務をこなせるような仕組みづくりが必要です。この仕組みづくりのために、手段として業務の見える化を用います。初期段階の「見える化」です。
2.ムリ・ムラ・ムダの排除(定量的な問題・課題)
同じ業務を複数の人が行ったり、漠然と同じ手順で続けている場合があります。それらの効率化や合理化のため、「ムリ・ムダ・ムラ」の見える化をします。その際には、業務を定量化して比較しますので、時間や単価、不良品の数や生産個数など、比較しやすい定量的なものを中心に見える化を図ります。
また、漠然と行うのではなく、目標値や基準値を設定して、そのための改善や工夫を行い、定期的もしくは継続的に見える化できるようにする必要があります。もちろん、前段として1.の段階があります。
3.定性的な問題・課題の認識
業務手順そのものは皆わかっているのだが、なんとなく今のままではよくない気がする。しかし、どこがよくないのか見えない。そういった、感覚的なものを認識させる目的で使います。これは2.の見える化より少し難しくなり、問題点を見つけられそうな鍵となる「指標」を考えることが重要です。人や物の動き、定性的なものなど数値化しくにくいものを指標とすることで対応します。
4.分業化・統合
一人、一つの業務ではなく、複数の業務や複数人の業務を見据えて問題を見つけたり、効率化を考えたりする場合においては、「見える化」の前に、同じ物差しで比較できるような基準を設けることが鍵です。また、部分最適な視点ではなく、全体最適の視点で俯瞰できる体制・考え方で臨む必要があります。そのため、関連業務全体・もしくは会社全体としてのグランドデザインがある程度描けるようにしなくてはいけません。
5.IT活用への布石
システムを導入する際、自社に最適な機能は何が必要なのかを洗い出したり、システム規模や対象範囲を明確にするときに使います。
ただ、対象となる業務が1?4のどれに該当するかによって洗い出し方も変わりますし、そもそも1?4のステップを踏んでからでないとこの目的には到達できません。つまり、IT活用とは、ある程度、「見える化」の目処がついてから考えるべきステップです。
6.情報共有
頭の中にあるものをみなに見えるようにする、あるいは、局所的なものを全体的に見えるようにするときに使います。
たとえば、ラインの現状をスタッフがつかむことで、今までライン部門では気づかなかった支援方法や強化方法を見つけることができる。あるいは、疑心暗鬼になっていた部分を解消することで、社員の安心感や一体感を向上させる。などの効果があります。
これは、1?4のどの場合においても使える目的であり、ホワイトボードや掲示板、回覧などの既存のツールでもできます。この「見える化」は、パソコンやインターネットがないとできないわけではありません。
さて、代表的な目的を6つほど出しました。みなさんの会社の中で上記のような目的があれば、「見える化」は有効手段です。しかし、あくまでも手段です。「見える化」自身は決して目的ではない。改めて理解をお願いします。