今回は作業手順書のチェックポイントについてお話しします。
建設業では作業着手前に作業手順書を作成し、着工前勉強会もしくは着工前打合せとして、作業内容を確認し、品質、原価、安全、工期的に問題がないか、内容を担当者や関係者が把握できているかどうかをチェックすることがあります。
チェックする対象作業については、新規性や特殊性で選ばれることもありますが、基本的には品質、原価、安全、工期で全体工事に大きく影響するものを選ぶようにしています。
勉強会(打合せ)前に担当の現場監督が実際に工事を行う施工業者から事前に提出してもらった書類に目を通すのですが、この際のチェックポイントがなかなかわからず、結果的に勉強会(打合せ)でもミスや問題を見逃してしまっていることが少なくないようです。
そこで今回はこの点を注意してほしいというポイントを2回に分けて紹介したいと思います。
(1) 作業が不足していないか
まずは作業に不足がないかどうかを確認します。新しい作業は割と細かく作業ステップを記載していますが、慣れている作業はついつい頭の中で作業を進めてしまい、作業が欠けてしまっていることがあります。全員が共通の認識を持っていれば問題ないこともありますが、監督が未経験だと思わぬミス(作業状況写真の撮り忘れ)を起こすこともあるので、作業は書き忘れないようにしましょう。
確認の方法はいろいろあるとは思いますが、おすすめは自分が作業員になったとして手順書通りで所定のものができるかどうかを頭の中や紙を使って描いてみることです。鉄筋組立などは鉛筆やボールペンなどを使ってやるとよりイメージがしやすいです。段取り筋やスペーサーの準備や配置、足場の設置など図面に書かれている鉄筋以外の作業が抜けていることに気づきます。また、検査や写真撮影などのタイミングも監督しては重要です。作業手順書に記載することまでは不要ですが、タイミングを明確にして打合せの際に施工業者さんに伝えられるようメモをしておきましょう。
もちろん、初めての工事の場合、なかなかイメージしにくいのも事実です。他現場の事例や写真をみてたり、工事業者に直接聞くということを遠慮なく行いましょう。また、会社全体として勉強会や見学会の実施を行うことも望ましいです。
(2) 作業の順序はよいか
次に作業の順序を確認します。引き続き、鉄筋組立の場合でいうと主筋と配力筋の配置順序やせん断補強筋を先行しておくべきかどうかなど対象現場の対象鉄筋の長さや重量、状況によっては形状によって大きく異なります。現場単位ではなく部位単位で変わることもあるので、前回の作業ではOKでも、次の作業ではだめということもあることを忘れないようにしなくてはいけません。
また、鉄筋加工図や配筋図だけでなく、仮設計画図なども見て確認しないと作業手順書だけでは決められないことが多いので、関連する図面もセットにして、みるように心がけましょう。
できれば、会社全体でセットにすべき図面の一覧表を作成し、作業手順書と一緒にするようルール化したほうが間違いありません。
(3) 前作業・後作業との関係はよいか
その作業を行う前にやるべきことやその作業が行われた後に行う作業の内容も重要です。確認していなかったために後で大変な手間をかけることになったり、最悪やり直しになることもあります。
鉄筋組立であれば、墨出しと呼ばれる位置決めの準備が前工程で型枠組立が後工程になります。作業環境によっては、鉄筋組立の途中で型枠の準備をしなくてはいけないこともあります。基礎の鉄筋組立の場合、さらにその前の作業である均しコンクリート内に事前準備をしておく場合もあります。
このように前作業と後作業が明確であることはもちろん、その内容が対象作業とどう関係しているかを知っておく必要があります。担当者は自分の担当工事だけではなく、関連する工事すべてに関心をもって、情報を入手するように心がけることが重要です。