前回に引き続き作業手順書の作成の進め方についてお話しします。
前回、前々回は作業手順書作成を優先する作業として、
(1) 危険度の高い作業:S(安全)への影響度が高い作業
(2) 作業効率の悪い作業:D(工期)への影響度が高い作業
(3) 品質の問題が多い作業:Q(品質)への影響度が高い作業
(4) 作業員の多い作業:C(費用)への影響度が高い作業
といった順番で進めましょうとお話ししました。今回は各手順書の単位での進め方についてお話しします。
まずは作業標準書と作業手順書、施工要領書の違いからお話しします。
作業標準書と作業手順書の違いはなんでしょう。多くの書籍やネット上の記事には同様のものと書かれていたり、作業標準はISO的な品質・環境の手順で、作業手順は安全の手順だと書かれていたりします。さらにISOには施工要領書もしくは作業要領書といわれるものもあり、混乱されている方も多いと思います。いろいろな見方があると思いますが、私はそれらの書類の位置づけを以下のように考えています。
・作業標準書
特定の作業について、どの現場でもある程度通用する手順を記載した書類。過去の現場の作業実績や法令、品質基準に照らし合わせて作られた手順の基本書
・作業手順書
特定の作業について、対象となる現場でのみ適用する手順を記載した書類。作業標準書をもとに周辺環境(作業時間や搬入路制限)や現場独自ルール(法令以上の安全・環境対策)、施工条件(地盤状況や施工エリアの大きさ等)を考慮した手順の実践書
・施工要領書
特定の作業について、対象となる現場のみで通用する作業手順書に施工体制や管理手順も記載した書類。手順だけではなく、管理責任や施工時期なども明示されている職長、現場監督の現場指示の指針書。施工内容に応じて、複数の作業手順書が含まれる場合もある。単独の作業手順書のみの場合、作業要領書とよぶ。
つまり、作業手順書の進め方として、まずはじめに、過去の実績や法令、品質基準等を考慮した作業標準書を作成する。次に各現場において各現場の特徴・ルールを考慮した作業手順書をつくる。さらに明確な管理を行うために管理体制や施工時期などを明記した作業要領書をつくるという流れです。
ここで大切なことは、作業手順書は現場に即したものが必要であり、どの現場でも通用するものではありません。だからといって、その場限りの応急処置的な手順書ではなく、実績、法令、社内基準を踏まえた作業標準をベースにつくる必要があるということです。
「現場はひとつひとつ違うんだから作業手順書なんて簡単に作れない」とか「元請や発注者がもっている作業手順書(実は作業標準書)をコピーしておけばOK」とかいうのはこの区別をきちんと理解できていないからだと思います。
なお、作業要領書はできれば作ったほうが望ましいですが、なかなか手間暇がかかるので、対象現場の工事の中でQ(品質)C(コスト)D(工期)S(安全)E(環境)に特に影響を及ぼすものだけ作成しているのが実情です。