前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。
今回は、前回までの各ケースでの対応を踏まえて、全体的に注意すべき事項について何回に分けてお話しします。
(1) 契約管理
消費税増税対応で一番大切な管理がこの契約管理です。
改めていいますが、消費税の課税基準は着工日でも竣工日でもありません。契約日と引渡日です。つまり、これらが不明瞭な場合は消費税が何%か決めることができないということになります。
そのために、いつも以上に契約日、引渡日をきちんと管理するようにしてください。具体的には契約台帳を作成し、契約番号、契約名、契約者名、契約日、引渡予定日、引渡日、税抜金額、税込金額、経過措置の対象の有無、備考等を記載しておくことです。営業や契約関係者が複数いる企業ならば、担当者枠も設けておくことをおすすめします。
さらに追加契約や変更契約(金額、期間)も一目でわかるようにしたほうが望ましいです。具体的にはメインの契約番号から枝番などを振ることで関係性がわかるような形にします。紙ベースで管理するのであれば、メインの契約番号の下を数行あけておいて、追加や変更契約を記載するようにしましょう。追加と変更ではその意味が変わりますので、枝番の付け方にも工夫が必要です。
例をあげるとすると、例えば、年間数百件の工事件数ならば5桁の本番号+2桁の枝番号として、最初の3桁を基本契約番号、次の2桁を追加契約用番号、最後の2桁を変更契約用番号とします。なぜ、追加と変更を分けるかというと、追加工事が変更することもよくあるからです。もちろん、年度を超えて管理したいのであれば、さらに2桁もしくは4桁を最初に追加して、西暦を記載しておけばいいと思います。具体的にすると
1302300-00(2013年度23番目の本契約で基本契約)
1302302-01(2013年度23番目の2つめの追加契約で1回変更)
といった感じです。既にルールがあるのならば問題ありませんし、追加や変更の数が過去実績よりそんなに少なければ、両方とも1桁ずつにしてもいいと思います。
大切なのは従来は一括で管理していただろう追加契約や変更契約が条件によって、本契約と違う消費税になる可能性があることを忘れてはいけないということです。金額が変わらなくても期間が変わるだけで消費税が変わることもあります。また、経過措置対象でも増額により、一部が消費税8%になるようなケースもあります。
特に契約金額増額は発注者側は望まないことだとは思いますが、だからといって、請け負けで終わるわけにはいきません。受注時に予測できる内容をあらかじめ発注者側に伝えておくとともに増額の可能性が高まったら、速やかに打合せができるような体制を構築してください。
もう一つ大事な契約台帳が下請との契約台帳です。上記で記載した項目はほぼそのままで契約関係者が工事担当者となり、工事ごとで管理することになると思います。その分、下請企業用の企業番号などを付記するような形で管理することが望ましいかもしれません。
こちらは発注者との契約と違って、口頭の場合もあると思いますが、以前お話ししたように必ず、契約日、引渡日は明確に文書化するようにしてください。文面を残さないとあとでトラブルのもとになります。単価契約でもベースとなる期間が消費税を決定することになります。この際にトラブルを最小限にするには年度単位での契約にして、売買契約と同様に年度で消費税が切り替わる形にすることです。
ただし、発注者側との契約が指定日以前つまり10月1日より前のため、下請契約も同様の契約をしている場合は、年度単位にこだわる必要がない代わりに増額管理をきちんと行うことが大切になります。とはいえ、無理な先行契約は望ましいことではありませんので、極力年度単位での契約をすることがいいと思います。
契約管理はこの消費税対応の要となります。社内でしっかりとした基準、手順、体制を構築しましょう。