消費税と建設業(その4)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 今回も各ケースにおける契約上や工事上の留意点についてお話ししたいと思います。

(3) 指定日後の契約で年度越え工事
 契約日:H25/10/ 1 引渡日:H26/ 4/ 1 原則8%

 このケースの場合、一番のポイントは請求と下請契約をどうするかになります。引き渡しが年度を超える工事のため、工事全体が消費税8%の契約になります。

 つまり、契約後からすべて請求額に対する消費税が8%ということです。前受金も中間金もたとえ年度内でも8%の消費税で計算して請求することができます。仮受消費税としても通常の契約より3%分の資金繰りが楽になることには変わりありません。請負金額が大きい工事であれば、企業運営に影響を及ぼします。逆の意味では発注者側が一番避けたい契約だと思います。それでもこの契約になったのであれば、理由が他にあるかもしれません。十分に発注側の意図を掴んでおきましょう。

 では、工事を行う際の協力業者への下請契約はどうすればいいでしょうか。当たり前のことですが、発注者が一番避けたい契約である同じ契約をすることは無意味です。つまり、年度を越えて一括契約するのではなく、年度内契約と次年度契約に分けて契約するのが基本的な考え方となります。こうすることで年度内契約は消費税5%、次年度契約は消費税8%となり、年度内分は3%丸々運用資金として動かせる算段になります。

 ちなみに材料仕入れなどの売買契約は支払時点の消費税が適用されますので、当然年内は5%です。この契約の特徴を最大限生かしできるだけ年度内に材料仕入れを済ませることをおすすめします。ただし、年度越えの期間が長くて保管費用が無駄になるとか、材料単価そのものが3%を超える下降傾向が予測できるのであればその限りではありません。十分に調査の上、購入を進めてください。

(4) 指定日前の契約で年度越え工事
 契約日:H25/ 9/30 引渡日:H26/ 4/ 1 これは経過措置で5%

 いわゆる経過措置対象工事です。先ほどのケースと違い、一番発注者が契約したいパターンです。実際に支援している企業や窓口相談に来られた企業からお聞きした限りではかなりこのケースで契約を求められたようです。

 こちらの場合は前受金や中間金はともかく、精算金が5%になってしまうことを忘れないようにしてください。また、年度を超えた工事は支払が8%の消費税でも入金が5%のため、3%分資金繰りが厳しくなることも重要なところです。

 さらに大事な点は契約が終わってもすぐ工事が始まるわけではないということです。前にもお話ししましたが、契約日と着工日は全く別物です。工事が年内に始まればいいほうで年度内でも微妙といった話も聞きます。法的に問題ないのかもしれませんが、倫理的にどうなのかといった感じもする契約が多いようです。とりあえずは着工時期をきちんと把握することからスタートといったところでしょうか。

 もちろん、こちらも協力業者との下請契約が重要なポイントになります。年度内、次年度分の工事量をきちんと見極めて契約を行うことが大切です。年度内の工事量を見誤って多くすると終わらずに契約が年度を越えて、消費税8%に切り替わることになるからです。発注者と同様に指定日前に契約するという大技もありますが、全体での着工日が見えないのに個別工種の着工日はもっと不透明です。そんな中で協力業者との契約はかなり難しいのではないでしょうか。

 契約を交わしたのちにできるだけ早く着工日を掴み、実施工程表から各協力業者への年度内と年度明けの仕事量を正確に把握し、契約を行うことです。

 また、この経過措置での契約において、請負金額増額分は消費税8%が適用されます。請負金額の変更(増額、減額)管理もあわせて正確に行いましょう。

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