消費税と建設業(その10)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 前回までにお話ししたように増税対応の最大のポイントは契約内容が変更した時にいかに円滑にかつ迅速にその変更を実現できるかにあります。今回は契約内容変更するために変更を使うための準備から変更のための提案までの留意点についてお話をします。

(1) 準備事項
 まず、変更であるかどうかを判断するために契約した工事内容を担当者が細部まで把握することが重要です。特に土工事のように数量や条件面が変更しやすいところは要注意としてすぐに参照できるようにマークをつけておくことや月単位での出来形数量を契約内容に合わせるなどの準備や工夫をしておきましょう。

 もう一つはいつも以上に、打合せ簿・議事録をこまめに残すことです。何がきっかけで変更が始まるかわかりません。定例会はもちろん、少し長めの雑談でもメモをとっておき、状況や内容に応じて正式な議事録にして、双方の印付きの書類にしておきましょう。

(2) 情報収集方法
 前回もお話ししたように現場だけにまかせることはやめましょう。いつも以上にこまめな声掛けを行い、変更に対して敏感に対応できるようにしましょう。

 具体的には担当者から幹部へ報告する手段として、作業日報に変更に関する枠を設けるとか、朝会・夕礼での連絡会議の際に必ず現場での変更がなかったどうかを確認する時間を設けるといった措置をとります。また、幹部自身も今まで以上に定期的に現場巡回を行い、協議会や安全パトロールに参加することで自社だけでは得にくい変更の情報を入手するように心がけてください。

 もちろん、変更できる工種とそうでない工種というのもあるはずです。やみくもに聞き取りをするのではなく、全体工程の進捗を踏まえて、タイミングよく要点をおさえることで無駄な巡回を減らすことも意識してください。

(3) 提案内容
 情報が入手でき、変更に対する提案ができるようになれば、その内容をつめることになります。最低限必要なのは、変更理由、変更内容(契約項目と数量)と概算金額です。特に変更内容は元請、発注者まで同じ単位で話せるように発注者の契約項目でまとめるようにしてください。自社の契約内容で進めるとお金を出すべき、発注者まで話が進みにくくなり、変更に無駄な時間がかかることも多いからです。

 ただし、この内容は誰に説明するかでもそれなりに変わります。係員レベルの人に話すのであれば、金額は不要で、数量や項目をメインに工程や段取りなど手間に重点を置いた話をしたほうがいいです。主任、所長(元請)に話をする場合は細部よりも金額を中心にします。最後に、発注者の場合は、変更理由(根拠)を中心にお話を進め、会計監査や議会承認、管理部の承諾といった発注者の内部の許可を得やすいための情報提供に重きを置いた提案内容にしましょう。この相手の視点に応じた内容を準備することはなかなか大変ですが、変更を円滑に進めるためには重要なポイントでもあります。

(4) 相談タイミング
 さて、提案がまとまったんだけど上位の方にいつ相談すればいいかというタイミングですが、基本的には早ければ早いほどいろいろな検討ができるので望ましいです。

 とはいえ、なかなか言いづらいのも事実です。私がおすすめするタイミングとしては事前なら月間工程打合せ時がベストで週間工程打合せ時がベターだと思います。当たり前のことですが、着手してからでは変更をうやむやにされてしまうことが少なくありません。

 それを避けるためにも最低限、○○の件で少し変更が出そうなので相談したいのだけどという話をしてください。提案がまとまってからが理想ですが、まとまるのをまって時間が過ぎるのも意味がありません。変更内容が概要でもわかった段階でお話をするようにしてください。

 ただし、着手直後でもあきらめるのはもったいないです。目の前で契約内容と違うことを見せたうえで後で相談をお願いしたいとの話をしてください。満額回答ではないとしてもゼロ回答でもないこともあるからです。

 変更の把握やその提案というのは増額になる分、なかなか言いづらいと思います。でも、あきらめたら何も変わりません。ダメもとでもまずはいう。言う内容に説得力を増すために少しでも工夫や手間をかけることを惜しまないでください。きっと得られるものはあります。

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