前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。
今回は前回の契約内容変更から少し派生して、公共工事における設計変更についてお話しします。
前回の契約内容変更を行うときによくお話が出るのが「公共工事は契約内容変更が無理だ」との話です。民間工事でも小規模工事なら総額でいくらといった話はよくあり、変更が難しいことはありますが、公共工事のように入札ではなく、ある程度価格交渉をしたうえでの総額といった点で違うという言い分です。
これは企業が公共工事中心型か民間工事中心型かによって、もっているイメージが違うようですが、中心ではない側のほうを変更しやすいとか金額を確保しやすいともっている感じをもちます。厳しい言い方をすると言い訳です。公共民間バランス型の企業ではあまりこのような話は出てこないのがまた興味深いです。
とはいえ、公共工事での契約内容変更いわゆる設計変更は手続きも煩雑で、金額も大きくなると議会承認が必要なこともあり大変なのは事実です。しかし、できないとか無理ではなく、難しいとか手間だということを忘れないでそこを打破することが大切です。打破するためのポイントをいくつか紹介します。
(1) 設計変更の手順を把握する
当たり前のことですが、意外とできていないのが設計変更の手順です。特に一番最初の手順であり、一番重要な打合せ簿のやりとりがうまくできていないことが多いです。
具体的には打合せ簿で「協議」を行い、変更の指示を受けないと設計変更のスタートにすら立てません。話はしたけど工法変更について「通知」されて「承諾」したり、「協議」の回答前に施工したり、手続きと違うこと、口頭のみでは設計変更はできません。
これらは国土交通省の「設計変更ガイドライン」や各地方公共団体の「設計変更の手引き」等に記載されていることです。標準仕様書や公共工事標準請負契約約款も含め、契約に関する基本的な基準はきちんと押さえましょう。
また、それと同時に大切なことが打合せ簿の「指示」、「協議」、「通知」、「承諾」、「提出」、「報告」、「届出」の意味と役割を理解しておくことです。以前上司から「打合せ簿はお金だ!」とよく聞かされていましたが、標準仕様書等に書かれている内容を理解するとその意味がよくわかります。現場監督はどうしても各工種別の管理基準や試験要領に目がいきがちですが、仕様書の最初のほうに書かれている契約や基本的な交渉ルールは頭の中に入れておくことを意識してください。
(2) 変更対象を絞り込む
設計変更は原則、どの工種でもできます。しかし、変更対象になりやすいものは実は限られています。具体的には
・目に見えないもの、細かい事前調査ができないもの(土質、水位)
・工事の最後になくなってしまうもの(仮設物、搬出する掘削土)
・第3者(地域住民)の要望によるもの(交通整理員、仮囲い)
といったものです。逆に明確に数量で表せるものは数量ミスがない限り変更は難しいです。これらの場所にターゲットを絞って着工前にできるだけ予測をしておくことで確実に設計変更への可能性は高まります。
また、最近の傾向で設置が物理的にできない鉄筋や設備など標準図でごまかされているようなものもあります。これらは明確に数量で表せますが、設計変更への可能性として上記の次に考慮すべき場所だと思います。
(3) 設計変更に関する情報収集
同種工事を行うことが多い企業ならば1回目の工事では難しくても2回目以降の同種工事には1回目で苦労した部位や工種にめどをつけて設計変更を検討することが可能です。このような情報は竣工後のわかることが多いので、社内で反省をいかせる仕組みをつくることが大切です。
また、同種他工事の設計変更額と部位、工種や落札時の基準価格との差異、対象地方公共団体の年間予算と消化状況等も営業担当がこまめに調べ、設計変更できる余裕が本当にあるのかどうかも集めておくことが大切です。例えば、年末年度末に発注量が多い傾向がわかった場合、年度途中では予算がそれなりにあると推定できます。それ以外にもどこまでの設計変更金額が議会承認になるかなど各団体ごとのルールも収集しておきましょう。
手順を理解し、予測を立て準備をし、情報を収集して次回に活かせる仕組みを作れば、設計変更の難易度は確実に下がります。ぜひチャレンジしてください。